▼Week09-#02:忽那憲治, 長谷川博和, 高橋徳行, 五十嵐伸吾, 山田仁一郎『アントレプレナーシップ入門 – ベンチャーの創造を学ぶ』(有斐閣, 2013年)
感想:★★★☆☆
読了:2017/03/04
今週の課題図書を早めに読み終えたので、第9週の2冊目として、手短に読めそうな1冊を前倒しで読みました。第2週に読んだ『イノベーションと企業家精神』や第6週の『ソーシャル・エンタプライズ論』以来のアントレプレーナーシップ関連のテーマの本。
本書は、冒頭の「はしがき」にも書かれているように、高校を卒業したての学部学生に向けたアントレプレナーシップの教科書。とはいえ、「新奇性が高いものを創造しようと思えば、単に専門力を深めるだけでは不十分で、専門力と同時に総合力が問われる。アントレプレナーシップとはまさにそうした性格を持った学問である」(忽那 他『アントレプレナーシップ入門』, i)とあるように、ややもすると専門化してしまいがちな職業人にとっても開眼させられる内容です。ここで言われる「総合力」たるものを育てることこそが教養教育(リベラルアーツ)であって、そういう意味で、この本が高校を卒業したての学生をターゲットとしているのは非常に納得がいきます。
本書の構成は、起業を思いつくアントレプレナーがいかなることをしなくてはならないかを、事業機会を見つける段階からビジネスモデルを構築して、チームを作り、資金調達をして… という順を追って概説します。「日本のスタートアップ企業では、事業機会の評価をすること、あるいは事業機会が存在するかについて検証することさえ行わない例が多く見られる」(同書, p.39)や、「自分の発案したアイデアがどのようにすばらしいかをアピールするあまりに、自らのアイデアに固執しすぎてしまうアントレプレナーが多い」(同書, p.53)という記述には心当たりがとてもあります。教養教育課程の学生に限らず、起業を志向する方がプロセスを学び、かつ、いかなる陥穽があるかを把握するためにもよい書物です。ベンチャー企業で経営企画部門を担う身としては、目新しいといった内容はないものの、よくまとまっているので頭が整理されました。以下、その他メモ。
- その他、潜在顧客を考えるための「共感図(empathy map)」法や、ブレインストーミングの際に発想を発散させるための「オズボーンの9つのチェックリスト」など使いやすそうな思考のフレームワークが折に触れて紹介されているのも簡潔で実用的。
- クリステンセン 他『イノベーションのDNA』から紹介をされている箇所であるが、「イノベータDNA」モデルは非常にわかりやすい。「彼らの研究によれば、破壊的イノベータは、一見、無関係に見える問題やアイデアを結びつけて、新しい方向性を見出すことができるという認知的スキルである『関連づけ思考』を働かせている。また、この関連づけ思考を誘発するために、質問力、観察力、ネットワーク力、実験力という4つの行動的スキルをフルに活用している」(同書, pp.14-5)
- 読書リストが各章末にまとまっているのも○。
▼アントレプレナーシップに関する読書リスト
No. | 読了日 | 評価 | 書名 | 著者名 |
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1 | 2017/01/10 | ★★★★☆ | 『イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】』 | P.F.ドラッカー |
2 | 2017/02/11 | ★★★★☆ | 『ソーシャル・エンタープライズ論』 | 鈴木良隆 (編) |
3 | 2017/03/04 | ★★★☆☆ | 『アントレプレナーシップ入門』 | 忽那憲治, 長谷川博和, 高橋徳行, 五十嵐伸吾, 山田仁一郎 |
4 | 2017/03/17 | ★★★☆☆ | 『アントレプレナーの戦略論』 | 新藤晴臣 |