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「0→1の社交的スキル」と「1→10の社交的スキル」

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少し前に、いくつか似たサービスに関するニュースを立て続けに見かけて、気にかかっていたので簡単に整理をしておきたいと思います。

いずれも食事会をアレンジするという点で同様の目的を持ったサービスで、他にもスマートフォンが普及してきたことで、さらに位置情報も絡めた設計になっているサービスも出てきているようです。こうしたサービスが最近になって続々とリリースされているのは、デバイス(スマートフォン)の普及や、プラットフォームとして利用しやすいSNS(TwitterやFacebook)の普及によって実現が容易になったからと言えるでしょう。

これらのコンセプトは理解できるのですが、多くの人がこれを利用するというイメージを持てないことが気にかかっていました。知っている友人との食事の日程をアレンジする「調整さん」程度の使い方ならするかも知れませんが、そうした用途にはもうツールがあるわけで、新たな人とのつながりを生むようなものでないとサービスとしてあまり意味がありません。でも、新たな人とのつながりを生む「人と人とを結びつけるハブ」がたとえば位置情報だったとしても、リアルにおいてすら、隣近所だからといって同じマンションの住人と交流があるかといえばそういうことはほとんどないことを考えたりすると、オンラインにおいても同様にそこで交流は生まれるのか疑問、というのが最初の直感です。

もう一歩進めて考えるとき、「ソーシャルサービス」の捉え方の違いがヒントになるかも知れません。

アメリカで使われるソーシャルメディアという言葉と、日本で使われるその意味合いにもズレがあります。メディアには、知らない人と結びつく「ブリッジング」と、既存の関係を強化していく「ボンディング」という二つの機能があるといわれますが、日本におけるソーシャルメディアはボンディングのツールとしての意味合いが強く、親密な相手とのコミュニケーションに使われていることが多い。
一方アメリカでは、新しい関係を作りだすためのメディアとして使われるケースが多い。本人の仕事や、人種、宗教などのプロフィールを開示しますので、パブリックなものになっている。移民社会のアメリカであれば、普段から人種や宗教が違うということを前提にコミュニケーションをしなくてはいけませんから、ソーシャルなスキルを鍛える必要があります。でも日本の場合は、その意識が薄い。ツイッターなども、企業からすればパブリックな場面で発言できるツールを手に入れたことにもなるのに、友達とプライベートに話しているときのような感覚で使われている。

岡田朋之・鈴木謙介 対談「新デバイス、ソーシャルメディアの浸透と消費行動」, 『宣伝会議』 no.796 (2010/9/1), p.29.

この議論を受けると、「新たな人とのつながりを生む(ランチをする)」というのはソーシャルサービスのブリッジング(0→1)的な利用方法になりますが、主にボンディング(1→10)目的でソーシャルサービスが消費される日本においては、前述のようなサービスは馴染みにくいのではないかと考えられます。文化的なバックグラウンドに多少の違いはあるにはせよ相互理解に大きな努力を要するほどではない、つまりコミュニケーションコストがもともと低いような環境では、「0→1の社交的スキル」は要求されないため、普段からコミュニケーションを効率化するということに意識が向かいにくいのもまた当然かも知れません。

こうしたことを念頭に置くと、「食事会をアレンジする」というような目的を持ったサービスを日本で展開するのであれば、「0→1の社交的スキル」にダイレクトに依存するのではなく、「1→10の社交的スキル」をうまく配置することで「0→1」のコミュニケーションを生む仕組みを志向するのがよいのではないかと考えます。このとき、「合コン」というキーワードはヒントになるような気がしています。


[Summary]
There recently has been several services released, by which users can arrange lunch or dinner with someone whom they don’t know. I suppose that these services won’t be popular in Japan because, in this country with less diversity, social skill of Japanese likely tends to be a “bonding” one, less than a “bridging” one. If expecting those services to be widely used, “bonding” styled communication will be required to be implemented.

Written by shungoarai

5月 22nd, 2011 at 11:30 am

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