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[映画] 2017年4〜6月の映画感想

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(年間通算)
鑑賞日評価タイトル/原題製作年/製作国監督
112017/04/02★★☆☆☆ジャッキー:ファーストレディ 最後の使命/Jackie2016年/米国パブロ・ラライン
122017/04/02★★★★☆牯嶺街少年殺人事件/牯嶺街少年殺人事件(A Brighter Summer Day)1991年/台湾エドワード・ヤン(楊徳昌)
132017/04/08★★★☆☆ゴースト・イン・ザ・シェル/Ghost in the Shell2017年/米国ルパート・サンダース
142017/04/15★★★★☆ぼくと魔法の言葉たち/Life Animated2016年/米国ロジャー・ロス・ウィリアムズ
152017/04/23★★★★★美女と野獣/Beauty and the Beast2017年/米国ビル・コンドン
162017/05/02★★★★☆メットガラ:ドレスをまとった美術館/The First Monday in May2016年/米国アンドリュー・ロッシ
172017/05/05★★★☆☆エルミタージュ美術館:美を守る宮殿/ Hermitage Revealed2014年/英国マージー・キンモンス
182017/05/05★★★☆☆カフェ・ソサエティ/Café Society2016年/米国ウディ・アレン
192017/05/06★★★★☆台北ストーリー/青梅竹馬(Taipei Story)1986年/台湾エドワード・ヤン(楊徳昌)
202017/05/28★★★☆☆マンチェスター・バイ・ザ・シー/Manchester by the Sea2016年/米国ケネス・ロナーガン
212017/06/21★★★★★花様年華/In the Mood for Love2000年/中国香港ウォン・カーウァイ(王家衛)
222017/06/22★★★★★ブエノスアイレス/春光乍洩(Happy Together)1997年/英領香港ウォン・カーウァイ(王家衛)
232017/06/25★★★★☆天使の涙/墮落天使(Fallen Angels)1995年/英領香港ウォン・カーウァイ(王家衛)
242017/06/26★★★★★恋する惑星/重慶森林(Chungking Express)1994年/英領香港ウォン・カーウァイ(王家衛)
252017/06/29
(2回目)
★★★★★恋する惑星/重慶森林(Chungking Express)1994年/英領香港ウォン・カーウァイ(王家衛)

#11:P.ラライン『ジャッキー:ファーストレディ 最後の使命』(2016年 米国)

#ナタリーポートマン 見たさに足を運んだ『#ジャッキー』でしたが、ナタリー・ポートマンパイセンの美しさと、知性溢れる演技以外に何を見て、何を受け取ればいいのか謎な映画でした。 エンドクレジットに “Dialect Coach(方言指導)” とあったけど、フランス系の家に育ったジャクリーンが特に興奮気味のときに出てくるフランス語訛りの英語を、ナタリー・ポートマンがうまく操ってた。 ファーストレディのファッション提供については、”Special thanks to CHANEL”。 たびたび眠くなりました。最近よく眠れないなって方にはおすすめです。 2017年 通算11本目 感想:★★☆☆☆ #Jackie #Film #Movie #NataliePortman #PabloLarraín #MovieList2017

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#12:エドワード・ヤン『牯嶺街少年殺人事件』(1991年 台湾)

今日2本目は、ずっと気になっていた『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』。エドワード・ヤン監督の1991年の作品を25年ぶりに4Kリストア、デジタルリマスターしたもの。完全版ということで、4時間の長さ。 国民党が台湾に移って樹立した政権下では初めての少年による殺人事件をモチーフにしたストーリー。思春期の少年の純粋性と衝動がテーマ。 長さは特に問題じゃなかったけれど、ところどころ登場人物がごっちゃになったり、人間関係を把握できてなかったり、中盤の大事な展開の帰結や意味を撮り損ねた気がするので、もう一回見てみたい。 見ながら「事実」というものきついても考えさせられた。もちろん政治家が “alternative fact” なんてことを言ってしまってはいけないのだけれど、個人レベルにおいては「代替的な現実=真実とは異なるかもしれないけど『現実』として受け取っておけばよいこと」というのは大事で、主人公・小四を最後の衝動に追い込んでしまったのは、その代替的な現実の綻びが原因だ。 複雑な環境の中で育った地頭の良い少年として背景設定されている小四のことだから、「代替的な現実」はそれとして、真実もおそらくは感じ取っていたのだと思う。あえて他人からその「真実」を口にされ、真実が真実として確定させられてしまったことは大きな苦しみをもたらしたに違いない。その意味で、端役であるが、小翠のおこないはとても罪深い。 たぶん2回か3回出てくるのだけれど、舗装もされていない土の道を戦車が列をなして通るシーンがあって、舞台となった1961年の台湾の社会や情勢に想像が膨らむ。プレスリーに少年少女たちが憧れているけれど、この時代はまだ大陸の中華人民共和国は正統性を持っていなくて、中華民国(台湾)が国連に加盟しているのみならず、安保理の常任理事国に名を連ねていたんだな、とか。 2017年 通算12本目 感想:★★★★☆ #牯嶺街少年殺人事件 #クーリンチェ少年殺人事件 #クー嶺街少年殺人事件 #ABrighterSummerDay #Film #Movie #EdwardYang #楊徳昌 #ZhangZhen #張震 #MovieList2017

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#13:R.サンダース『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017年 米国)

楽しみにしていた実写版『#ゴーストインザシェル』がようやく公開になったので早速。 1) 観ながらAR(拡張現実)やVR(仮想現実)がインプリされた世界は、未来というよりも、現在から地続きの近いところにあるなあとか、そのなかでいかに感覚・認識がジャックされたり、あるいはバグを防いだり許容したりするのかというのは、結構アクチュアルな問題となってきているのかもしれないなとか考えさせられた。 2) ストーリー構成はところどころ改変されているにはせよ、『#攻殻機動隊』好きの方にとってはアニメ版のオマージュにあふれた象徴的なカットもふんだんに盛り込まれていて楽しめるし、(ネタバレですが)#川井憲次 によるテーマソングも歌われるのも満足です。「吾が舞えば」から始まるあの歌は本当にゾクゾクする。 3) アニメ版やリメイク版『トータル・リコール』のような#アジアンゴシック 調の世界観も魅力的だし、#スカヨハ の非現実的な美しさってその現実離れした感じゆえにSFにマッチしてるのかなあとか、 (というか、同じくスカヨハの出ていた2005年作品のマイケル・ベイ『アイランド』の自体設定は2019年なんですが、それはあまりに攻め過ぎじゃないすかね) 4) 舞台設定や音楽の東洋感は、そういえばかつて東浩紀が「サイバースペースはなぜそう呼ばれるか」(だったか「情報自由論」だったか)で語っていたように(たしか)、欧米の作家にとっての地理的な隔たりによって時間軸的な隔たりを表現している結果なのかなとか、 5) いずれにせよ、20年以上を経てもいまなお想像力や創作の源泉になっている『攻殻機動隊』ってすごいなとか、 そんなことを思いながら退館の列を並んでいると、やはり一人で観に来ていた友人に会うなどして、そこから1時間ほど近未来について語らせてくれることなども含め、本作に感謝です。 2017年 通算13本目 感想:★★★☆☆ #GhostInTheShell #Film #Movie #RupertSanders #ScarlettJohansson #Kitano #MovieList2017

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#14:R.R.ウィリアムズ『ぼくと魔法の言葉たち』(2016年 米国)

少し前に、たぶんここシネスイッチでヨーヨー・マの映画を観た際にトレイラーを目にしたのだと思うんだけれど、そのときにとても気になった『#ぼくと魔法の言葉たち』を観た。 3歳のときに自閉症の症状が現れた23歳の青年、オーウェンとその家族のドキュメンタリー。家族たちは、ディズニー映画を観るときのオーウェンはいつもと違うこと、そして、あるときをきっかけに彼がディズニー映画のセリフのひとつひとつをすべて暗記していることを知り、ディズニー映画のセリフを使えば会話をすることができることに気付く。 オーウェンは、周りの世界の複雑さ・わかりにくさを、ディズニー映画のキャラクターたちの誇張され、わかりやすくデフォルメされた表情・感情をフレームワークとして理解しようとしていたのだ。 しかし、大人になるにつれて、将来・恋愛・性の問題などディズニー映画の提示してくれる枠組みだけでは解決できないことにぶつかる。ディズニーのヒロインは、けっして舌を絡め合うキスなどしない。オーウェンは、ディズニー映画から派生させて、自分の物語を紡ぐことで前に進んでいく。 オーウェンを理解し、見守り、そして自立させていこうとする家族の苦悩や愛情にとても胸を打たれる。もちろん、彼は同じような症状を持つ子たちと比べて格段に恵まれた環境にいるのかもしれない。それでも、家族のつながりの深さというものをあらためて考えさせられる。 自分たちがいなくなった後も、ひとりで生きていけるように、この子に挫折や失敗を経験させなければいけない、いまならそれもできるはずだ、という両親の息子に対する信頼がとても心を打った。 ディズニー映画のフッテージをふんだんに使っている点がすごいのと、ところどころに挿入されるベルギーのアニメーション制作会社マックガフによるオーウェン原作「Land of the Lost Sidekick」が素晴らしい出来。 2017年 通算14本目 感想:★★★★☆ #LifeAnimated #Film #Movie #Documentary #DocumentaryFilm #RodgerRossWilliams #MovieList2017

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#15:B.コンドン『美女と野獣』(2017年 米国)

日曜のレイトショーで『#美女と野獣』。この週末はこの作品一択でしょくらいの絞り込み。 むかし音楽を書く真似事をしていた頃に聴き続けた作品のひとつだから、細かいオーケストレーションまでが頭の中で再現されて、指揮を振れるんじゃないかと思ったくらい。そんなこともあって、ストーリーばかりじゃなくいろんなものがよみがえって、涙が出続けました。 しかし#エマワトソン、きれいすぎる。笑顔がかわいすぎる。アニメーションのバージョンで曲が頭に入ってるから、最初のうちは歌い方の違いとか細かいことも気になってしまったけど、もう途中からは全然。女神でした。 そして、ガストンのクズさが半端じゃない描き方になってますが、村人が城に押し寄せるあのシーンはポピュリズムの恐ろしさをまざまざと見せる点で現代世界の問題ともとても通じていて、2017年の米国映画としても重要です。 そして、こんな言い回しを覚えました。 “Where did you get the idea like that?”(そんなこと誰が言ってた?) “You think you could be happy here?”(幸せになれる?) とにかく、エマ・ワトソンありがとう、な作品です。 2017年 通算15本目 感想:★★★★★ #BeautyAndTheBeast #Film #Movie #Musical #MusicalFilm #DisneyMovie #EmmaWatson #BillCondon #MovieList2017

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#16:A.ロッシ『メットガラ:ドレスをまとった美術館』(2016年 米国)

カレンダー通りに出勤したあと、気になっていた『#メットガラ ドレスをまとった美術館』を観た。メトロポリタン美術館の2015年の企画展「鏡の中の中国(China: Through the Looking Glass)」とファッションイベント「メットガラ」の舞台裏を追ったドキュメンタリー。 題材となった企画展は、「中国」というテーマにいかにファッションがインスパイアされてきたのかという展示だったようだけれど、このfilterされ、exaggerateされたChinese tasteは本当に好物。 そして、その趣味はある程度普遍的なものだという裏付けに登場するのは、同展でも映像を担ったという#ウォンカーウァイ パイセン。映画中にも時折カットが挿入されていたけど、『#花様年華』での#マギーチャン のチャイナドレス姿は本当に綺麗。いつかウィンシャの撮った同作のスチルのオリジナルプリントが欲しい。 『#プラダを着た悪魔』#アナウィンター の迫力がかっこよかったのと、#リアーナ がきれいでした。 2017年 通算16本目 感想:★★★★☆ #TheFirstMondayInMay #Film #Movie #Musical #Documentary #DocumentaryFilm #MovieList2017

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#17:A.ロッシ『エルミタージュ美術館:美を守る宮殿』(2014年 英国)

前回の『メットガラ』に引き続いて有楽町のヒューマントラストシネマにて『#エルミタージュ美術館 #美を守る宮殿』。ミュージアム関連の映画として2作ともまとめてGWに見ておきたかったもの。 エルミタージュはいつか行きたい美術館。ソクーロフが館内で長回しした『エルミタージュ幻想』も有名だけど、今作は館長や学芸員などの関係者へのインタビューなどをもとに構成した紹介ドキュメンタリーといった感じ。 個人的には、語りが多すぎて、もっと映像だけで見せても良いのではとも思ったけれど、進むうちにインタビューの内容も興味深かった。 —– 主人公と言ってもよい館長は、父親も館長という出身。共産主義国における学者という特権階級のあり方について気になりもした。 エルミタージュの長い歴史は、革命や戦争を潜り抜けた戦火の歴史でもある。レニングラード包囲線を経験した高齢の老婆のインタビューが交えられているのはとてもよかった。当事者ゆえの、あるいは時間の経過がもたらすバイアスを排除するためのディスカウントは必要とはいえ、オーラルヒストリーはとても大事だ。 展示作品に現代芸術も多いことに結構びっくりしたけれど、確かにすでにロマノフ朝の時代は遥か昔で、その後のソ連、ロシア共和国が芸術作品を集めたのであれば納得。 それにしても、芸術作品の鑑賞って年齢によって変わるもんだなということにも改めて気づいた。制作者(芸術家)が年を経るごとに作風を変えていくのと同様に、鑑賞者の側も年を経て、またさまざまなものを見る経験を経て、好みが変わったり拡張される。ピカソやカンディンスキーなんて、好きになったのはいつ頃からだっけなとか考えた。 2017年 通算17本目 感想:★★★☆☆ #HermitageRevealed #HermitageMuseum #Film #Movie #Documentary #DocumentaryFilm #MovieList2017

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#18:W.アレン『カフェ・ソサエティ』(2016年 米国)

今日2本目の映画はウディ・アレン監督作品『#カフェソサエティ』。本日公開初日。 ウディ・アレン作品は『ミッドナイト・イン・パリ』以来だから5年ぶりくらいだけど、相変わらずのウディ・アレンぷりというか、それに輪をかけて主演が『ソーシャルネットワーク』でザッカーバーグ役を演じたジェシー・アイゼンバーグだったこともあって、半端なく童貞感の強い映画になっていました。おしゃれに描いてますが童貞映画です。ウディ・アレン平常運転という感じ。 ウディ・アレン作品はコミカルでライトでおもしろいんだけれど、とにかく男にとって都合が良いストーリー展開は、村上春樹的でもあり、(裏返しの)王家衛的でもある。あり得た自分を思ってパラレルワールドを描くか、葬送を行うか、それとも再び交差させるか。 Time passes, life moves on, people change. Dreams are dreams. ふたりのヴェロニカ(クリステン・スチュワートとブレイク・ライブリー)のどちらも綺麗で、目の保養になる映画でした。 2017年 通算18本目 感想:★★★☆☆ #CaféSociety #CafeSociety #Drama #Comedy #Film #Movie #WoodyAllen #WoddyAllenMovie #JesseEisenberg #KristenStewart #BlakeLively #UnrequiredLove #MovieList2017

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#19:エドワード・ヤン『台北ストーリー』(1986年 台湾)

本日公開の#エドワードヤン 監督『#台北ストーリー』(1985年)。こちらの作品も、先月観た『牯嶺街少年殺人事件』(1991年)と同様に4Kデジタルリマスターされたもの。 学生になった頃にはすでに台湾ニューシネマの全盛期は遠く過ぎ去っていたので、台湾映画というのはなんとなく縁遠く、ちゃんと見覚えがあるのは今作で主演・共同脚本を担っている#ホウシャオシェン の『百年恋歌』とか『珈琲時光』あたりを何作品かだけ。 しかし、ここ最近続けてエドワード・ヤンの作品を見て(そもそも彼は生涯に長編作品を7本しか遺していない)、台湾映画の全盛期の荒削りな輝きとともに、アイデンティティの問題に立ち向かわざるを得なかった事情などがよく伝わってきた。 意外なことに『牯嶺街少年殺人事件』はこの作品よりも後(1991年)に公開されている。同作は、91年の公開時点から見たら30年前の事件を扱った作品だが、85年公開の本作は同時代の台北を扱っている。となると、主人公達は実際の演者とほぼ同年代ということであり、童顔のホウ・シャオシェンは例外としても、50年代半ば生まれの人々が30代に差し掛かったあたりの群像劇と考えられる。 彼らは、国共内戦を経て49年に中華民国が台湾に移転したあとに生まれた世代だ。親の世代は日本の統治も知っているし、大陸からの逃亡も経験している。混乱の時代に起きた高校生による同級生の殺人事件(牯嶺街少年殺人事件)も、小学生の頃にセンセーショナルに報道されていたのだろう。そして、キッシンジャーやニクソンによる米中関係の回復や国連の議席が台湾(中華民国)から中国へと移される71〜72年は、彼らの思春期に当たる。 翻って、舞台となる85年の台北には日本の影響が強く影を落としている。ヒロイン阿貞の妹・阿鈴や仲間たちの住む中山北路に面したビルの屋上からのカットがしばしば差し込まれるが、そこで印象的なのは言わずもがな富士フィルム(富士相紙)のネオン広告だ。横には旧いNEC(日本電氣)のロゴも見えるし、少し下を覗き込むと「…日語中心」と書かれた日本語学校の看板もたびたび映り込む。この時代の台湾は、日本(日本企業)にとって市場でもあり、労働資源の調達元でもあったのだろう。 あるいは、阿貞の嫉妬相手でもあるかつての同級生・阿娟(を演じる柯素雲がめちゃくちゃ綺麗)の詳しくは語られないけれど破綻した結婚関係の相手は小林という名の日本人だ。明示的には語られなくとも、登場人物たちの、そして同時代の台湾人たちの日本への感情はとても複雑だ。 米国で学問を修めた後に台湾へ戻ったエドワード・ヤンは、異質性をその作品の中で描くことが多かったというけど、2作品しか見ていないのでそれは何とも言えない。ただ、そこにつながる「アイデンティティ」というテーマから離れることはできなかったに違いない。阿貞から結婚やアメリカ移住を提案された主人公・阿隆(ホウ・シャオシェン)がどちらも「万能薬ではない(不是萬靈丹)」と言っているのも、すぐれてアイデンティティをめぐった議論だ。 よい映画を見たあとに感じる疲れを覚えました。なんとなくウォン・カーウァイの『旺角卡門(いますぐ抱きしめたい)』を観返したくなった。 2017年 通算19本目 感想:★★★★☆ #青梅竹馬 #TaipeiStory #Film #Movie #EdwardYang #楊徳昌 #HouHsiaoHsien #侯孝賢 #MovieList2017

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#20:K.ロナーガン『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016年 米国)

しばらく立て込んでいたのでGW以来の映画館。数ヶ月前に、いいらしいよと勧められていたのを思い出して見に行った作品『#マンチェスターバイザシー』。 連日の寝不足と、最初の方のわけのわからなさ(登場人物の人間関係や、彼らの背負う背景は最初はなかなかわからず、次第にインサートされるカットで明かされていく)のため、最初の方に10分くらい居眠りしてしまったものの、だんだんと引き込まれた。 最初のうちは、一体この作品は何を描きたくて撮ったのだろうとポカーンとしていたけれど、それも次第に見えてきます。 過去の傷から、同じところをぐるぐる回ってばかりで抜け出せない人の葛藤というのかな。それがとても胸苦しい作品。 ただ、そんな主人公リー(#ケイシーアフレック)に救いをもたらすためか、元妻ランディ(#ミシェルウィリアムズ)に後半で語らせるシーンはちょっと違う気がした。結局「許す女/謝る女」という男目線でのストーリー構築になってしまっているような気がしました。 2017年 通算20本目 感想:★★★☆☆ #ManchesterByTheSea #Film #Movie #MovieList2017 #KennethLonergan #CaseyAffleck #MichelleWilliams #Oscar2017

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#21:ウォン・カーウァイ『花様年華』(2000年 中国香港)

人生であと1本だけ映画を観てよい、という選択を迫られたら必ずこれを選ぶであろう作品が、渋谷でリバイバル上映されていることを知ってすぐさま都合をつけて観てきた。 『#花様年華』(#王家衛 監督作品, 2000年)は、これまでに幾度観たかわからないし、とにかくどこを切り出しても美しい映画。僕の香港への憧憬を決定づけたのもこの作品。クリストファー・ドイルの撮るこれでもかとオリエンタルな色合いを強調した映像も、西麻布テーゼでも決まって夜更けにかかる「夢二のテーマ」や、ナットキングコールによる「キサス、キサス、キサス」もどれも中毒性がある。 シーンごとに異なるチャイナドレスをまとったマギー・チャンも、細身のタイにスーツ姿のトニー・レオンが絵になりすぎているけれど、それ以上に1960年代の香港というのが第三の主人公で、この舞台設定があってこそ本作の匂いやかさというか艶めかしさが際立っているといえる。王家衛も、おそらく子供の頃の記憶を相当に美化し、晶化させて構築したにちがいない。 ハルキストの王家衛が描く男女の関係のストーリーも緻密だけれど(階段、扉、壁、電話など相手を見透かせない装置や記号を多用することで見る者に不断に想像力を働かせる)、すでにいろいろなところで語られているように香港の帰属というアイデンティティの問題がこの作品の裏テーマだ。その意味でも、「香港」そのものも本作の主人公といえる。 次作『2046』につながるルームナンバー付きの扉は本作で登場する。「2046」とはもちろんのこと、1997年から50年後の年号で、香港返還後もこの年までは「一国二制度」を維持するとされている年を暗示している。本作で、この扉が閉まる直前にチャン(マギー・チャン)の言い残す「一線は越えたくない」というセリフは、極めて多義的だ。 このあたりを考えると、チャンに部屋を貸すスエンさんという存在は何を意味しているのかは、検討するに値するテーマだと思う。チャンの「一線を越えない」ポリシーは、自分自身のものでもありつつ、スエンさんという外の目を気にしたものだからだ。しかしこのスエンさんも「香港の将来を気にして」(本人ではなく娘が、だけれど)米国に渡るわけで、このあたりでいったい何を表象しているのかがわかりにくくなって、答えはまだ出ていない。 一方、ずっと長いこと、ラストのアンコール・ワット寺院のシーンの冒頭でなぜニュース映像(ドゴール将軍のカンボジア訪問、1966年9月)がさほど短くなく挿入されているのかは不思議だったけれど、これも香港の中国の関係とを暗示させるカットなのだと理解できた。 トニー・レオンは同じリバイバル上映の別の回で『恋する惑星』(1995年)を観るとして、マギー・チャンはずっと若いときに出演している王家衛の『いますぐ抱きしめたい』(1988年)を見たくなる。 あと、失恋した者同士を人工的な精緻さで結びつけるストーリー仕立てという点では三島の『盗賊』なんかも読み返したい。 2017年 通算21本目 感想:★★★★★ #InTheMoodForLove #Film #Movie #MovieList2017 #WongKarWai #ChristopherDoyle #TonyLeung #LiangChaowei #MaggieCheung #ZhangManyu

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#22:ウォン・カーウァイ『ブエノスアイレス』(1997年 英領香港)

たたみかけるような形で、昨日に引き続きウォン・カーウァイ特集上映で『#ブエノスアイレス』(1997年)。 この作品は『花様年華』(2000年)ほどの高い完成度までは到達していないものの、直前の『恋する惑星』(1995年)との間に位置する重要な作品。作風も短いモノローグを多用したりする点やカメラワークなど、前作に共通しているところが多い。 一方で、物語にアクセントを加えるチャン(チャン・チェン)がアルバイトで貯めた金で持って目指す「悲しみを捨てる」ことのできる灯台と、そのために吹き込むテープレコーダーへの独白(聞こえない)は、もちろんのこと、次作『花様年華』のアンコール・ワット寺院でのエンディングと重なる。 Google検索によれば「恋愛映画」とカテゴライズされている本作は、その実、恋愛映画の形を借りつつ、やはり香港のアイデンティティを扱った映画であろう。作中で第3の登場人物 チャンの灯台への到着をわざわざ「97年の1月」と述べていることにも現れている。ゆえに、本作は同性愛を主テーマとして描いた映画ですらない。 ラストに近いシーンでのファン(トニー・レオン)の独白によりアルゼンチンは香港から見た地球の裏側だと明かされる。これは説明的に語る必要があったに違いない。「香港の反対」という言葉には、仕事場のカネを使い込んだファンが逃げた「遠いところ」であると同時に、他方では「中国」をも意味したと想像できるからだ。ファンが仕事にありついたホテルに押し寄せるのが台湾からの観光客だというのも暗示的だ。民主化運動が活発になった結果、台湾の住民が大陸訪問を許されるようになったのは80年代後半以降のことだ。 ファンとチャンの移動の軌跡は、返還後の香港の在り方への動揺や思考の曲折の表現なのだろう。そう考えると、同じ華人による離別や混交を描くためにも、この作品が同性愛の物語という形を取らざるを得なかったであろうことにも合点がいくのだ。 劇中、ファンがウィン(レスリー・チャン)にタバコの火を与えるシーンの表現は素晴らしく良いと思った。電子タバコが一般的になったら、この表現も理解しにくくなるんだろうなあとか考えながら見ていた。 しかし、ウォン・カーウァイに撮らせると、香港でなくともそこが香港のように撮られてしまう。特に夜のシーンの黄色と赤の発色の強い感じ。これは本作のブエノスアイレスのシーンに限らず、『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(2007年)のメンフィスの夜のシーンなんかは、光の加減に加えてトラムの感じもそうで(しかも、この作品ではカメラはクリストファー・ドイルではないからウォン・カーウァイ自身の意志なのだと思う)、ウォン・カーウァイは舞台はどこであれ、香港の物語を撮ろうとしているのだろうなあと感じる。 2017年 通算22本目 感想:★★★★★ #HappyTogether #春光乍洩 #Film #Movie #MovieList2017 #WongKarWai #ChristopherDoyle #TonyLeung #LeslieCheung #ZhangZhen

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#23:ウォン・カーウァイ『天使の涙』(1995年 英領香港)

Bunkamura ル・シネマでアンコール上映されているウォン・カーウァイ特集の3作目。 元々は『メット・ガラ』に関連しての特集上映だったということだけれど(このドキュメンタリーが背景を記録する2015年のメトロポリタン美術館の企画展「鏡の中の中国」の映像をウォン・カーウァイが担当している)、『恋する惑星』『天使の涙』『ブエノスアイレス』『花様年華』という1994年から2000年にかけての諸作品をまとめた上映は、香港の中国返還から20周年という年の企画としても正しい印象を受ける。 『#天使の涙』は、『恋する惑星』系統の恋愛とバイオレンスの描写とがミックスされたウォン・カーウァイ的でもあり、混淆的な香港を切り取ろうとした世界観の映画。テーマは、幾度となく登場するワードである「パートナー」。このパートナーという二者間関係の綻びや、築くことの困難を描いた作品。 恋愛映画として見ている中、後半になると、金城武が演じるモウに何度も絡まれる役としてコミカルさをこの作品に与えている陳輝虹(英語版Wikipediaでは役を “Man forced to eat ice cream” と表現されているのが面白い)の家族が本土に行ったと語られるなど、アイデンティティに関する問題は本作にも出てくる。そう考えて注意してみると、モウの人物設定からして台湾からの移住者であって、『ブエノスアイレス』と同様の思考が本作でもされていたのかもしれない。 モウが女エージェント(ミッシェル・リー)をバイクに乗せてクロスハーバートンネルを走る映画のラストシーンでの女の独白「すぐに着いて降りるのは分かってたけど 今のこの暖かさは永遠だった(”…and I know I’ll be getting off soon. But at this moment I’m feeling such lovely warmth.”)」というセリフはとても象徴的。返還直前の香港の人たちのメンタリティを重ねた言葉であったのだろうなあとか想像しながら見た。直後のエンドロールにかぶさる「Only You」がとても感傷的です。 ミッシェル・リーがとても綺麗。 日曜の夜の最終回の映画は好きです。 2017年 通算23本目 感想:★★★★☆ #FallenAngels #墮落天使 #Film #Movie #MovieList2017 #WongKarWai #ChristopherDoyle #LeonLai #MichelleReis #TakeshiKaneshiro #CharlieYeung #KarenMok

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#24:ウォン・カーウァイ『恋する惑星』(1994年 英領香港)

So much moooooved to watch my all-time favorite finally at a theater!! ル・シネマの「ウォン・カーウァイ特集」で、ついに4作目の『#恋する惑星』。今日は朝から頭の中でフェイ・ウォンの歌う「#夢中人」がずっと流れていたけど、見終えたあとも鼓動が止まらない感じ。 幾度となく観たことのあるこの作品についてはいくらでも語れるけど、今日はむしろ映画館で見られたことの感動だけでいっぱいです。 2017年 通算24本目 感想:★★★★★ #ChungkingExpress #重慶森林 #Film #Movie #MovieList2017 #WongKarWai #ChristopherDoyle #FayeWong #TonyLeung #TakeshiKaneshiro #BrigitteLin

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#25:ウォン・カーウァイ『恋する惑星』(1994年 英領香港)2回目

特集上映が終わってしまう前に、もう一度観ておきたかった『#恋する惑星』のために午後半休を取った。 こんなにも何度も何度も観た作品でも、見るたびに細かい発見がある。 (1) 警官663号(トニー・レオン)がデートに来ていくシャツはフェイ(フェイ・ウォン)が選んで買ってクローゼットに入れたもの。 (2) 家にいることを見つかったフェイが最後に隠れていたのは663号の元カノ(周嘉玲)がよく隠れていたクローゼット。 この作品の2つのエピソードは、以下の共通するモティーフを用いていて、その順番を前後させたりして語り方は変えているものの、基本的には同じ物語。 (1) 内省的な(あるいは女々しい)男が失恋をし、別の女性に出会うことでその痛手を克服するboy meets girl。 (2) 男は一晩のうちに2人の女に振られる。 (3) 女は図らずも、男の横で眠りに落ちてしまう。男は女の靴を脱がせる。 #王家衛 は間違いなく、同じ物語を何度も何度も繰り返し語るタイプの作家だ。彼の頭の中には、このストーリーがずっと流れているのに違いない。 だからこそ、僕は『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(2007年)もまた、『恋する惑星』と同じ物語なのだと思っている。エリザベス(ノラ・ジョーンズ)のNYからメンフィス、ネバダ、ラスベガスを経てNYへ戻る旅は、『恋する惑星』でスキップされているフェイの1年間の米国旅行だ。 2つの旅のいずれも、果てしない遠回りをして通りの反対側へと渡る話だ。 幾度見ても、ラストシーンのフェイと警官を辞めた663号のやりとりが甘い。 2017年 通算25本目 感想:★★★★★ #ChungkingExpress #重慶森林 #Film #Movie #MovieList2017 #WongKarWai #ChristopherDoyle #FayeWong #TonyLeung #TakeshiKaneshiro #BrigitteLin

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Written by shungoarai

7月 1st, 2017 at 12:00 am

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