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[BookReview] L. ギャラガー『Airbnb Story』

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▼Week26-#01:リー・ギャラガー『Airbnb Story:大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法』(日経BP社, 2017年)

感想:★★★★★
読了:2017/06/29

はじめてAirbnbを使ったのは2011年6月のこと。会社を移るインターバルの休暇で行った旅行の裏テーマは「Airbnbを使ってみたい」ということで、帰国した後にそれをブログに書いた([雑記]帰国しました(メモ1:Airbnbを使ってみた))。

ひさびさに起業ストーリーものの本を読み始めたけれど、途中で全く飽きが来ることなく読み切った。5月末に邦訳が出たばかりで、原書 “Airbnb Story” も今年の2月に刊行されたものなので、シェアリングエコノミーのユニコーン Airbnbをかなり直近の出来事まで追った本。

本書は、デイビッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』のような競争と興奮の起業サクセスストーリーで終わることなく、以下の2点から興味深く感じた。

  1. ビジネスエコシステムの観点
    • Airbnbというマーケットプレイス型のプラットフォームが急成長を遂げると、そこに補完的なサービスも次々と現れる。
      • ホストコミュニティが拡大するにつれ、ホストへの支援サービスを行うスタートアップも次々と生まれている。シーツ交換、枕干し、ベッドメイク、鍵の受け渡し、物件管理、ミニバーサービス、税務サービス、データ分析など。エアビーアンドビー版ゴールドラッシュの『つるはし調達屋』と呼んでもいい。(p.132)

      • 本書中では、以下のような例が挙げられている。Everbookedのサイトに「Our Client」としてPillowのロゴが掲載されていることからは、補完業者間でも関係が生まれていることが窺える。
        • ホスト向け管理サービス「Guesty」、「Pillow
        • サプライ品調達サービス「オナータブ」
        • ダイナミックプライシングツール「Everbooked
        • 鍵の受け渡しサービス「Keycafe
    • 一方で、日本でも民泊について規制と規制緩和が論じられているのと同様に、各国・州・都市での規制との戦いも描かれている。背景には観光政策のほかにも、住宅政策がある(ニューヨーク市は3.4%の空室率という賃貸住宅不足から、さらなる住宅不足を招くようなビジネスを許容しにくい)。またホテル業界もコンペティターとなってきている。ビジネスを取り巻く所与の環境には、どのような力が働いているのかを立体的にイメージするのによい素材。
  2. 起業家自身の成長の観点
    • 3人の共同創業者のチームは、ほとんどビジネス経験がないなかでAirbnbを創業し、急成長させている。第7章「リーダーになる」は、彼らがいかに経営者として成長していくかが描かれており、ここにはさまざまな学びが含まれているように思った。チェスキーの学習姿勢・意欲、ゲビアの気づいた「象、死んだ魚、嘔吐」など。
    • そして、何より粘り強さや、大きなアイデアを持ち続けることが重要だということに立ち返らせてくれる。
      • チェスキーはほかの起業家にずっとこの作戦を勧めている。「ローンチしてだれも気付いてくれなかったら、何度でもローンチすればいい。ローンチして、誰も気付いてくれなかったら、何度でもローンチすればいい。ローンチしたら、そのたびに記事にしてくれるから」(p.42)

      • よく見逃されているが、エアビーアンドビーは今も昔も実行力で抜きん出ている。(p.317)

    • 起業家自身もこの成長に自覚的であることが印象的だ。それは創業者たちの自負の反映でもあり、自らに課した負荷でもあるはずだ。
      • 「問題はね…本に残るのが、たまたまその瞬間のこの会社を切り取った姿だけってことなんだ…僕は34歳で…会社はまだ若い。先は長いし、これからまだたくさんのことをやる…今みんなが思ってるエアビーは、2年前のエアビーだ」(pp.7-8)。

Written by shungoarai

6月 29th, 2017 at 10:00 am

Posted in Books

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