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[BookReview] 永野健二『バブル – 日本迷走の原点』

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今年は計画的に読むべき本を読もうと、ひとまず3月末までの各週に読むべき本をリスト化してみました。そのリストに沿って、毎週2冊程度のペースでコンスタントにインプットしていきたいと考えています。


▼Week01-#01:永野健二『バブル – 日本迷走の原点』(2016.11, 新潮社)

感想:★★★☆☆
読了:2017/01/05

年末年始休みの後半に読み出したのは、バブル期の経済事象を日本経済新聞 証券部の記者として追っていた著者による80年代バブル経済を振り返った本から。話題作となった『住友銀行秘史』と前後して、約20年を経てこの時期に「バブル」をテーマとした書籍の出版が相次いだのは、長期化する現政権下での経済政策にバブルの萌芽が見られることへの警戒感によるものからでしょう。

住友銀行の元取締役によって書かれたイトマン事件の顛末に関する前掲書が当事者による定点記録であるのに対して、永野氏の『バブル』は元記者による書籍らしく、バブル期のさまざまな挿話をもとに構成された書物。

山一證券破綻、NTT上場、リクルート事件、イ・アイ・イや尾上縫、イトマン事件など、取り上げられるひとつひとつのエピソードはけっしてバラバラではなく、戦後から70年代まで日本経済を動かしていたシステムが変化しそこねたひとつのストーリーの諸相として提示されています。

すなわち「資金不足のもとでの金融の傾斜配分と、資源不足のもとでの産業の傾斜生産」(p.20)という前提で復興・経済成長を担った興銀を頂点とした金融機関が構造改革を先送った歴史として読むことができます。

…[引用者補:85年のプラザ合意以後]日本のリーダーたちは、円高にも耐えうる日本の経済構造の変革を選ばずに、日銀は低金利政策を、政府は為替介入を、そして民間の企業や銀行は、財テク収益の拡大の路を選んだ。そして、異常な株高政策が導入され、土地高も加速した。

その大きなツケを支払う過程が、「失われた20年」といわれる、バブル崩壊から現在まで続くデフレ状況である。アベノミクスというのは、80年代のバブルの時代の失政を償うための経済政策でもあるのだ。(永野『バブル』p.261)

いまだにまだ日本は「80年代バブル後」を生きているままであること、またその総括を十分にせず無自覚なまま次なるバブルへと足を踏み入れかけていることを考えさせられる一冊。


Written by shungoarai

1月 8th, 2017 at 5:00 pm

Posted in Books

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