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mixiの「足あと」終了が示すこと

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昨日の夕方、IT関連のニュースサイトは続々とmixiの機能リニューアルに関する記事を掲載しました。

ミクシィは6月6日、SNS「mixi」の「足あと」機能をリニューアルし、新たに「先週の訪問者」機能として6月13日から提供すると発表した。訪問者を「友人」と「その他」に分け、1週間に訪れた人を翌週に表示する。

「足あと」機能は2004年2月のmixi開始当初から、いつ誰が自分のページを訪問したかを把握でき、またページを訪れたことを友人に簡単に伝えられるフィードバック機能として提供してきた。だが最近は「mixiボイス」など足あとがつかないサービスの利用が進んでいる上、「イイネ!」を使って友人へのフィードバックも容易になっており、サービスの多様化とコミュニケーションスタイルの多様化に合わせて改善することにした。

「mixiの『足あと』機能が『先週の訪問者』に リアルタイム履歴表示は終了」, ITmedia ニュース, 2011年6月6日.

Twitter上での反応を見る限り、リアルタイム履歴表示終了を惜しむ声も散見されますが、「足あと」ページが次第に見られなくなってきたという数値的な根拠もあっての決定であろうと思います。私自身は、iPhoneアプリ版に「足あと」ページがないのを見たときに、おやっと思ったのですが、その頃からすでに「足あと」機能のプライオリティは下がっていたのかと推察します。ITmedia の記事中では、

… 最近は「mixiボイス」など足あとがつかないサービスの利用が進んでいる上、「イイネ!」を使って友人へのフィードバックも容易になっており、サービスの多様化とコミュニケーションスタイルの多様化に合わせて改善することにした。

とあるので、「2010年度第4四半期及び通期 決算説明資料」をチェックしてみると、

mixi総コミュニケーション投稿数(株式会社ミクシィ 2010年度通期決算説明会 資料)

とあるように、投稿トレンドは、「mixiのコミュニケーション機能(ボイス、日記、フォト、カレンダー、チェック、チェックイン、イイネ!)の投稿数及び各機能のフィードバック(コメント、イイネ!)数の総計」を指す『総コミュニケーション投稿数』という指標でまとめられてしまっています。では、そのうち「ボイス」がどの程度を占めているのかを見ようとすると、

各コミュニケーション機能の投稿数トレンド(同上)

といった具合に「ボイス」と「チェック」の投稿数が時系列での相対値でのみ表示されていて、絶対値としてどれだけの投稿があるのかはこれだけではわからないのですが、実際のところはかなりの割合をこれらに依存しているのではないかと考えられます。日記の投稿も、「イイネ!」ボタンを押した回数も同様に1としてカウントアップしてしまう「総コミュニケーション投稿数」なる指標はかなりダウトフルですが、そのなかで「足あと」の意味合いが薄れてくるほどに、「ボイス」などがmixi内で発信される情報の総量を牽引しているのでしょう。

このことからは、以下のようなことを示しているのかもしれません。

  1. 「マイミク」を中心としたソーシャルグラフを元にした、mixiのクローズドなコミュニケーションにおいても、やりとりされている情報のひとつひとつは希薄化しているのではないか。
  2. 一方で、このように発信される情報が希薄化し、(イイネ!ボタンなどによって)レスポンスのハードルも低くなったなかでは、「足あと」のような単に「誰がこの情報を見たのか」という情報は意味を持たなくなってきたのではないか。

注意したいのは、ここで「希薄化」と言っているのは、コミュニケーションそのものについてではなく、やりとりされるひとつひとつの情報単体について言っているという点です。情報発信とレスポンスの双方でハードルの低下はやりとりの活発化を促したため、ひとつひとつの情報は希薄化していても、それらを総体として捉えたコミュニケーションは濃くなっているのではないかと感じます。


[Summary]
Early this week, the Japanese SNS mixi announced that it would soon renew a log feature of visitors to users’ own page, so called “Footprints”. The feature has been characteristic of the most popular SNS in Japan since launched in February 2004, and its disuse shows that users’ normal action has shifted from “Write/Read diary” style to “Tweet/Like” style. It may also show that each information distributed over closed social network in mixi becomes thinner while communication gets stronger on the whole led by easiness to send thinner information.

Written by shungoarai

6月 7th, 2011 at 5:00 pm

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“Like” はインフレーションを起こさないのか

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少し前になりますが、Ogilvy の上級副社長 Rohit Bhargava 氏が San-Fran で開催された “Social Media Optimization Conference” で行った講演が話題になりました(参考記事:All Facebook)。Bhargava 氏はそこで “Likeonomics” という用語を提示しています(プレゼンテーション資料, Slideshare)。

プレゼンテーションでは、”Likeonomics” が以下のように説明されています。

“Likeonomics” とは、最も魅力的な人物やアイデア、組織が信頼されたり、モノがそこから買われ、そしてインスパイアを人々に与えるような存在となるような、親近感による新しい経済(the new affinity economy)を説明するキーワードだ。

新たな世界通貨は紙でできたものではない。それは関係性でできている。

オンラインにおけるソーシャルネットワークがこれだけ発達しているなかで、そのネットワーク上でブランドが流通し、共有されることが企業にとって非常に重要になっているのは間違いがないと思うのですが、ではその “Likeonomics” = 「ライク経済」における基軸通貨は “Like” でありうるのかという点では、どうも疑問が残ってしまいます。

Facebook の “Like” ボタンなどが標準化したいま、ソーシャルネットワーク上に情報共有をすることが容易になりました。その一方で、情報共有が容易になったことは、共有される情報の平均的な質的レベルが下がっていることもあるのではないかと感じます。そしてそれは、ひいては “Like” の価値の低下につながります。

Tweet110529

先日、こんなことを Tweet したのは、さっさと消えてもよいような過去に Like した内容がずっと Facebook のWall上から表示されたままなのを見てでした。”Like” は、自分のそのときの咄嗟の好意感情をあまりに簡単に表明できる手段なので、自分が長年重宝しているブランドにも、そして、たとえば友人が焼肉に行ってビールを飲んでいる写真にも、同様に”Like” します。こういう状況で、結局のところ “Like” はインフレーションを起こしているんじゃないかと思います。”Like” はときに一過的なアクションです。しかし、「ライク経済」下で得るべきは、いわば「長期的なLike」=ロング・エンゲージメントであることを意識する必要があります。


[Summary]
In mid-May, Rohit Bhargava, SVP of Ogilvy, introduced a new term “Likeonomics” in his presentation at Social Media Optimization Conference held in San Francisco. According to him, Likeonomics “explains the new affinity economy where the most likeable people, ideas and organizations are the ones we believe in, buy from and get inspired by” and “The new currency powering this global economy isn’t made of paper, its made of relationships”. I agree that it is and become more and more important for brands to be distributed and shared on social networks though, I still have doubts about “Like” as a key currency in “Likeonomics”, because I think “Like” has worries of inflation by its easiness to impress.

Written by shungoarai

6月 6th, 2011 at 2:00 am

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新興市場で広がりはじめるファッション通販

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コンサルティングファームのA.T. カーニーから昨年9月に「世界の新興市場 小売企業の参入魅力度 – グローバル小売成長指数2010年版リポート」(日本語訳, 2010年9月, PDF文書)というレポートが出ていますが、このレポートの興味深い点は冒頭に掲げられた参入魅力度のランキングよりも、その先で掲げられた「機会の窓」(各市場の事業機会の大きさ)分析のように思います。

Opportunity curve

GRDI 「機会の窓」(事業機会の大きさ)に関する分析(A.T. カーニー, 2010年)

参入魅力度上位の中国(2010年 1位)やインド(同 3位)は、この中では成熟した市場として位置づけられていますが、一方で、いずれの国についても中間所得層の拡大による小売の継続的成長の見込みや、「より高質なショッピング環境とより強力なブランド」のニーズが述べられています。

約1ヶ月前、ファッションECモール「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが、ソフトバンクと合弁で香港に法人を設立し、ソフトバンク子会社のアリババのサポートを受けて中国国内でもサービスを展開するという発表がありました(参考:MarkeZine記事)。また先週も、中国・インドにおけるファッション通販に関する記事がいくつか見られましたが、これは中間所得層による高質な消費へのニーズのあらわれと言えるでしょう。

  1. China’s E-Commerce Giant Taobao Launches Women Apparel Aggregator Site (Penn Olson)
  2. The Gilt for Indian Fashion Exclusively.in Raises $16 Million (TechCrunch)

ひとつめは淘宝(Taobao)が女性向け衣料品専門のサイト「淘宝女装」を新たに立ち上げたニュース、ふたつめはインドのファッションブランド品のファミリーセールサイト「Exclusively.in」(インド版Gilt)が1,600万ドルを調達したニュースです。

インターネットの普及と経済発展が同時に起きている国々においては、あるカテゴリのインターネットサービスの成長を、単にサービスのオンライン化としてのみでなく、消費社会化のバロメータとしても見ることができるような気がします。


[Summary]
There were several news articles about fashion EC services in China and India recently. Emergence and rise of such services surely indicate growing needs for higher quality consumption by middle class as also written in an A.T. Kearney’s report “Expanding Opportunities for Global Retailers”. Especially in countries where internet popularization and economic growth proceed at the same time, a growth of web services in a certain category seems to show not only the extent that category goes online but also the extent of consumer society progress.

Written by shungoarai

5月 30th, 2011 at 5:00 pm

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ソーシャルサービスの進むインドネシア

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アジア圏のインターネット関連ニュースを扱う Penn Olson にまとめて目を通していたところ、今週のニュースとしてインドネシア関連のものが散見されたので整理しておきます。

Indonesia Map & Flag

  1. Every District in Indonesia Will Be On the Net By June 2011 (2011/05/23)
  2. Social Media in Asia [INFOGRAPHIC] (2011/05/24)
  3. Social Commerce, Indonesia and India (2011/05/23)

最初の記事は、インドネシア全域に光基幹網を整備する「パパラリング計画(Papala Ring Project)」の進捗について、同国の通信情報相のコメントを紹介したものです。コメントによれば、未整備の地域は東部の10,000平方キロメートルを残すばかりで80%が完了、今年6月までには国内全域での整備が完了するという見込みです。

2つめは、先頃PRファームの Edelman Digital が発表したアジア太平洋地域(APAC)でのソーシャルメディアの利用状況をまとめたインフォグラフィックを紹介した記事です(参考:Edelman Digital)。インフォグラフィックには Edelman Digital の発表情報を引用して説明が補われています。

  • 欧州と同様、APAC地域においてもFacebookが他を圧倒しており、域内13カ国のうち9カ国で最も有力なネットワークとなっている。
  • 一方、北アジアの国々では、中国における人人網(RenRen)、韓国におけるCyWorld、台湾における無名小站(Wretch)、そして日本におけるTwitterのように、その地域で強いソーシャルメディアが存在している。
  • 域内でインターネット普及率が最も高いのはニュージーランド(85.4%)、次いで韓国(81.1%)。しかし、4,800万人の国民のうち3,900万人がインターネットを利用している韓国の数字の方が [人口が500万人足らずのニュージーランドの高い普及率よりも] 重要だ。
  • 地域別に利用方法を見ると、北部では動画閲覧のためにインターネットが使われる傾向が強い一方で、南部では主にソーシャルネットワーキングに用いられているといえる。

インフォグラフィックを見ると、2点目・4点目にあるように、南部APAC地域ではおしなべてSNSがほぼ8割以上のインターネットユーザーに使われていて、最も使われているサービスはFacebookという状況が一目瞭然です。

さて、この2つの記事を確認した後に3つめの記事に目を通すと、状況がより理解できるように思います。この記事では、インドネシアにおけるソーシャルコマース市場はポテンシャルが大きく、オンラインでの消費がいまだ低水準であるこの国に多くの企業が資源を投下しているということがレポートされています。

2億4,000万人のインドネシア人口のうち、インターネットユーザーはまだ4,500万人にとどまる。しかし、そのうち3,500万人はFacebookのユーザーだ。政府が強力に推進するインターネット普及政策によって、インドネシアの人々のインターネットリテラシーが高まっていくのは間違いないだろう。

上記の引用箇所の数字を用いるとインドネシアにおけるインターネット普及率は20%未満(Internet World Stats では2010年の数値を12.3%としています)、この普及率は単純に比較すると1998〜99年頃の日本の水準です(総務省「情報通信白書」によれば、98年のインターネットの人口普及率は13.4%、翌99年は21.4%)。

しかし、この比較はさほど意味を持たないということを常に意識しておくことが必要だと思っています。人口普及率こそ日本の10年前の状況だとはいえ、インドネシアのインターネット利用者が見ているオンラインの世界はすでに、Facebookが主要プレイヤーとなった2011年の世界です。先日書いた「インターネットの普及フェーズと技術フェーズの差」というエントリーはサービス事業者の目線について考えたものですが、これはサービス利用者の目線から捉えると、「インターネットの普及フェーズと利用サービスのトレンドの差」とも言い換えることができるでしょう。


[Summary]
“Penn Olson” news article reports a huge potential of social commerce and many foreign companies are aiming to enjoy the growth. This situation is much understandable when glancing over a likelihood that Indonesian nationwide fibre-optic network project, Papala Ring Project, will be successfully completed by June 2011 as the authority’s announcement, and over quite a high penetration rate of Facebook against a still low rate of internet penetration as Edelman Digital recently reported. All that matters is that we must think users in emerging markets are naturally using up-to-date services, the same as users in developed markets do.

Written by shungoarai

5月 28th, 2011 at 2:00 pm

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中国で人気のボイスメッセンジャーアプリ「TalkBox」

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先日、友人の中国人留学生から教えてもらったスマートフォンアプリのひとつ「TalkBox」はとてもおもしろいアプリです。

「TalkBox」は、友人とメッセージをやりとりできるアプリで、感覚としてはSMSや、TwitterのDirect Message機能に似ていますが、決定的に違うのはこのサービスはテキストベースではなく音声ベースでやりとりをするという点です。

音声ベースではあるものの、電話と違って必ずしもリアルタイムなコミュニケーションである必要もないので、まさに音声版SMSといった具合で、UIも上の通り、iPhoneのSMSからヒントを得ているように見えます。

音声を用いた非リアルタイムのコミュニケーションツールというと、留守番電話はそれに当たりますが、携帯電話の留守番電話機能の使い勝手は、知る限りここ10年以上進化したようには見えません。端末を耳にあてながら音声ガイダンスを聞いて、時折端末を耳から離してボタン操作をするという、考えてみると回りくどいこのフローは、ここ10年ずっと変わっていません。「TalkBox」はその点、音声ベースのコミュニケーションツールではあるものの、インターフェイスがビジュアル面でも非常に整理されていて使いやすい点にまず驚きました。周りの人たちがこれを使うようになったら、留守番電話は使わなくなるかも知れません。

この「TalkBox」を開発元である香港のモバイルソリューション企業 Green Tomato のマーケティング担当役員の Jacqueline Chong 氏へのインタビュー記事が TechNode に掲載されています(インタビュー記事)。記事によれば、

  • テキストメッセージを送る際にかなり時間を要するという課題意識から、ボイスメッセンジャーサービスを企画した。
  • 公開後4ヶ月、今年4月に100万ユーザーを突破。
  • ユーザーは中華圏にとどまらず、米国、豪州、NZ、中東など世界各地に広がっている。
  • 3ヶ月以内にはBlackberry版もリリース予定。

とのこと。ユーザーが世界各地に広がっているというのも、このシンプルなUIを見ると納得です。ツールが広く受け入れられるための条件のひとつに、使用する際のガイダンスに多くの言葉を要さないことも挙げられると思いますが、「TalkBox」はその点でユニバーサルとなりうるデザインになっています。これから予定されているという同社製の他のアプリケーションとの連携も含めて注目したいと思います。

TalkBox Voice Messenger App
カテゴリ: ソーシャルネットワーキング
価格: 無料

 


[Summary]
TalkBox Voice Messenger, a smartphone app which one of my friends from China recently let me know, is a voice based instant messenger services, not a text base as many other similar apps. Though created by a Hong Kong based company, the design is simple and has no language barrier for foreigners. With its great value and simple UI, it has already gained over 1M users in 4 months, not only from the Greater China area including Taiwan, Malaysia and Singapore, but also from US, Australia, NZ and even from Middle East.

Written by shungoarai

5月 23rd, 2011 at 5:00 pm

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「0→1の社交的スキル」と「1→10の社交的スキル」

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少し前に、いくつか似たサービスに関するニュースを立て続けに見かけて、気にかかっていたので簡単に整理をしておきたいと思います。

いずれも食事会をアレンジするという点で同様の目的を持ったサービスで、他にもスマートフォンが普及してきたことで、さらに位置情報も絡めた設計になっているサービスも出てきているようです。こうしたサービスが最近になって続々とリリースされているのは、デバイス(スマートフォン)の普及や、プラットフォームとして利用しやすいSNS(TwitterやFacebook)の普及によって実現が容易になったからと言えるでしょう。

これらのコンセプトは理解できるのですが、多くの人がこれを利用するというイメージを持てないことが気にかかっていました。知っている友人との食事の日程をアレンジする「調整さん」程度の使い方ならするかも知れませんが、そうした用途にはもうツールがあるわけで、新たな人とのつながりを生むようなものでないとサービスとしてあまり意味がありません。でも、新たな人とのつながりを生む「人と人とを結びつけるハブ」がたとえば位置情報だったとしても、リアルにおいてすら、隣近所だからといって同じマンションの住人と交流があるかといえばそういうことはほとんどないことを考えたりすると、オンラインにおいても同様にそこで交流は生まれるのか疑問、というのが最初の直感です。

もう一歩進めて考えるとき、「ソーシャルサービス」の捉え方の違いがヒントになるかも知れません。

アメリカで使われるソーシャルメディアという言葉と、日本で使われるその意味合いにもズレがあります。メディアには、知らない人と結びつく「ブリッジング」と、既存の関係を強化していく「ボンディング」という二つの機能があるといわれますが、日本におけるソーシャルメディアはボンディングのツールとしての意味合いが強く、親密な相手とのコミュニケーションに使われていることが多い。
一方アメリカでは、新しい関係を作りだすためのメディアとして使われるケースが多い。本人の仕事や、人種、宗教などのプロフィールを開示しますので、パブリックなものになっている。移民社会のアメリカであれば、普段から人種や宗教が違うということを前提にコミュニケーションをしなくてはいけませんから、ソーシャルなスキルを鍛える必要があります。でも日本の場合は、その意識が薄い。ツイッターなども、企業からすればパブリックな場面で発言できるツールを手に入れたことにもなるのに、友達とプライベートに話しているときのような感覚で使われている。

岡田朋之・鈴木謙介 対談「新デバイス、ソーシャルメディアの浸透と消費行動」, 『宣伝会議』 no.796 (2010/9/1), p.29.

この議論を受けると、「新たな人とのつながりを生む(ランチをする)」というのはソーシャルサービスのブリッジング(0→1)的な利用方法になりますが、主にボンディング(1→10)目的でソーシャルサービスが消費される日本においては、前述のようなサービスは馴染みにくいのではないかと考えられます。文化的なバックグラウンドに多少の違いはあるにはせよ相互理解に大きな努力を要するほどではない、つまりコミュニケーションコストがもともと低いような環境では、「0→1の社交的スキル」は要求されないため、普段からコミュニケーションを効率化するということに意識が向かいにくいのもまた当然かも知れません。

こうしたことを念頭に置くと、「食事会をアレンジする」というような目的を持ったサービスを日本で展開するのであれば、「0→1の社交的スキル」にダイレクトに依存するのではなく、「1→10の社交的スキル」をうまく配置することで「0→1」のコミュニケーションを生む仕組みを志向するのがよいのではないかと考えます。このとき、「合コン」というキーワードはヒントになるような気がしています。


[Summary]
There recently has been several services released, by which users can arrange lunch or dinner with someone whom they don’t know. I suppose that these services won’t be popular in Japan because, in this country with less diversity, social skill of Japanese likely tends to be a “bonding” one, less than a “bridging” one. If expecting those services to be widely used, “bonding” styled communication will be required to be implemented.

Written by shungoarai

5月 22nd, 2011 at 11:30 am

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[Data]中国におけるiPhoneユーザーの特異性

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中国のインターネット産業に関するリサーチやコンサルティングを行っている iResearch(艾瑞諮詢集団) が、中国におけるiPhoneユーザーに関するデータを紹介する記事を21日に公開しています(記事)。最近発行されたレポート “2010 Chinese iPhone Users’ Usage Survey Report” 収録のデータをもとにしたこの記事では、以下の2つのポイントを取り上げています。

  1. iPhoneユーザーの年齢構造を見ると、最も多い層は25〜34歳の層で58.6%を占めている。スマートフォン一般では最も多い層は18〜24歳の層(49.2%)であり、iPhoneユーザーは、他のスマートフォンユーザーよりも年齢がやや高い。
    iResearchは、これには2つの理由があると見ている。すなわち、(1) iPhoneは他の端末より高いため、若いユーザーにとっては手が出しづらい、(2) iPhoneによって利用可能な機能・アプリなどを、娯楽やコミュニケーションを主な用途とする若いスマートフォンユーザーは必要としていない。
  2. iPhoneユーザーがiPhoneを使ってネットサーフィンをする頻度は、他のスマートフォンユーザーよりも低い。
    この理由も、部分的にはiPhoneの多機能性や豊富なアプリにあるとiReserchは見ており、ユーザーの関心はネットサーフィン以外のものへと向けられているのではないかと見られる。

iResearchが記事で見せている見解が正しいとするならば(*)、通常、中国ではiOSよりもAndroid端末の方が大きなシェアを持っていると言われますが、その差は決定的なほどではないようですし(参考)、ユーザーたちの可処分所得の伸び、もしくは端末自体のプライスダウンなどによって、iPhoneがシェアを逆転する可能性は十分にあるのかもしれません。iResearchが、スマートフォン一般に関するデータとは別に、iPhoneに関するレポートを発行しているということ自体が、いまだスマートフォン市場におけるシェアは固定したわけではなく、iPhoneにはポテンシャルがあると目されていることを語っているようにも思えます。

ただ、TechNode が別のデータを引いて報じているように(記事)、中国でのはiOS端末の34.6%、iPhone 3GSとiPhone4に限っていえば40%近くがジェイルブレイクされているというデータもあることも考えると、中国市場への浸透を図る前に、他の市場とは別のエコシステムを模索するということもありえるかもしれません。

* 当該のレポートは無償公開されていないため、元データは確認できていませんが、(1) 調査サンプル数が893サンプルと少数なので、サンプルの抽出方法、(2) 「スマートフォン一般」にはどういったものまでが含まれるのか、の2点が気になります。


[Summary]
According to iResearch’s article, iPhone users in China tend to be a bit older than users of regular smartphones. The article indicated that it was because of iPhone’s higher price and many features in it. If so, iPhone will acquire much users when people in China have much wealth or the prise of iPhone are discounted. But another article says that about 40% of iPhone in China has been jailbroken, so Apple may build their own new eco system before expanding its share.

Written by shungoarai

5月 22nd, 2011 at 3:00 am

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[Data]中国のインターネット人口に占める若年ユーザー

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先日、「インターネットの普及フェーズと技術フェーズの差」というエントリーをポストして以来、インターネットの浸透度について関心をいだいているさなか、ある記事を読んで驚いたあまりTwitterに投稿した内容がこれです。

SurprisedAtTaomeeUserNumber

TechNode の「淘米 vs 騰訊 – 子ども用SNS市場での戦い」という記事を読んでの感想だったのですが、記事中で紹介されている中国の子ども用SNS市場をリードする淘米網(TaoMee)の登録ユーザーが1億8000万人、そしてそのうち3〜5000万人がアクティブユーザーだという 情報は、はじめこそ驚いたものの、後から考えるとその規模が信じがたく、とりあえず中国のインターネットユーザーに関する統計を参照してみました。

中国互聯網絡信息中心(中国インターネット情報センター、CNNIC)が定期的に発表をしている “Statistical Reports on the Internet Development in China” の最新版(第27版, 2011年2月28日, PDF文書)によれば、2010年12月時点の中国のインターネット利用者数は4億5730万人です。

中国のインターネット人口推移(CNNIC)

また、同じ報告書にはインターネット利用者の年齢構成もあり、それによれば10代が27.3%、20代が29.8%と、かなり若年層に偏った構成になっていることが見て取れます。

中国のインターネット利用者年齢構成(CNNIC)

インターネット人口が4.6億人の国で、登録ユーザーが1.8億人ということは40%弱ということになりますし、「子ども用SNS」の対象年齢の定義は上記のTechNodeの記事のみではわからないものの、その数は10代の全インターネット利用者数をはるかに超えているわけで、これは簡単に信じることは難しい数字と感じます。

しかし、これとは話は別にしても、中国のインターネット利用者に占める学生の割合の大きさには眼を見張るものがあります。CNNICの統計によると、学生が全体の30%を占めていることがわかります。

中国のインターネット利用者職業構成(CNNIC)

この統計から短絡すると、あるいは中国のインターネットサービスはいまのところ可処分時間の多い利用者たちに支えられているということができるかもしれませんし、それはインターネットのより一層の普及によってトレンドが変わる余地が多分にあるということかもしれません。


[Summary]
According to a TechNode article, a leading kids SNS in China, “TaoMee”, has 180M registered users and 30M to 50M active users, but it seems a bit incredible when referring to CNNIC’s internet statistics in China which shows whole internet population in China was 457M as of December 2010. On the other hand, CNNIC’s data saying 30% of whole users were students may tell us that current Chinese popular web services are mainly supported by such youth having much disposal time.

Written by shungoarai

5月 15th, 2011 at 12:00 am

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検索はもっとプッシュ型に?

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無線通信と電気通信分野の標準化や規制を司る国際連合の専門機関・国際電機連合組合(ITU)の統計によれば、2010年の世界のインターネット普及率は30.1%と試算されています(ITU統計サイト)。

100人あたりインターネット利用者数の推移(ITU)

やはり同様に、Internet World Stats (インターネット市場調査会社の Maniwatts 社が運営)でも、2010年末の世界のインターネット普及率を28.7%と試算しているので、だいたい全世界ではいまだ3割くらいの普及に留まっているというのがホール・ピクチャーと言えそうです。そして、ざっくりと分けると先進国では普及率が約7割、新興国では約2割といった具合のようです。

先日の TechCrunch の記事 “A New Era Of Search Is About The Answers, Not Just The Links” は、上記のような事実も踏まえて考えると、よりリアルさが伝わってきます。
米国 Yahoo! の検索サービス関連の上級副社長 Shashi Seth 氏によるこの投稿記事で語られている内容は、「インターネットユーザーの消費するコンテンツの種類は変わったというのに、検索エンジンはいまだほとんどWebページにフォーカスしている。しかし検索エンジンはかなりラディカルに変わろうとしている」というのが主旨ですが、ではどのように変わっていくのだろうかということで触れられているのが、今回の投稿のタイトルに書いたことです。

これまでの検索は、情報やコンテンツをプル型で引き出すメカニズムだったが、Facebook や Twitter のようなソーシャルサイトではプッシュ型で情報やコンテンツを届けてくれる。今日の世界で検索が成功を収めるには、よりプッシュ型になる必要がある。

「検索」という言葉は能動的・主体的なニュアンスを持ちますが、これが「プル型」から「プッシュ型」になるというのは、検索する主体がユーザーから検索エンジンになっていくということを示しているのでしょう。

過去10年以上にわたって、インターネットで何か情報を得るときには、検索ボックスにキーワードをタイプすることが私たちにとって標準的な検索行動でした。しかしこの行動は、これまでインターネットを使ってきたたかだか3割程度の人にとっての「標準的な検索行動」だったと言えるでしょう。
一方、新興国においていまだ2割程度のインターネット普及率が、今後、先進国並みの7割近くまで徐々に引き上げられていくと仮定したとき、それらの差分である人口比5割程度の人々にとっての「標準的な検索行動」は、これまでの私たちにとっての「標準的な検索行動」とはまったく別のものである可能性もあるでしょう。別の機会で詳述しようと思っていますが、これからやってくる新しいインターネットユーザーは、はじめから Facebook や Twitter の存在しているインターネット世界に入ってくるわけです。

このとき、「検索」と「プッシュ型」という両者のニュアンスにいささかの違和感も持ちながら、しかし、これからの検索が Seth 氏の言うようにプッシュ型の情報提供をしてくれるようになっていくことは自然と感じられます。


[Summary]
Yahoo SVP of Search product Shashi Seth’s recent post on TechCrunch said search engine have to change radically along with the change of people’s information consuming style. Same as social media, Seth thinks search engine should be a more push mechanism.
In developing countries, internet penetration still remains around 30% and is growing. We have to pay attention to the fact that new comers from developing countries comes into this current internet environment, not the one we once encounter at the beginning. The new comers who take social media being for granted may easily find that the present normal searching style is no longer up-to-date.

Written by shungoarai

5月 10th, 2011 at 6:00 am

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インターネットの普及フェーズと技術フェーズの差

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中国のインターネット産業に関するニュースメディア TechNode が今週掲載したインタビュー記事は非常に興味深いものでした。インタビュー相手は、中国で2600万人の会員を抱える婚活サイト珍愛網(Zhenai)や、Foursquareに似たロケーションベースサービス(LBS)の嘀咕網(Digu)の創業者である李松(Dr. Song LI)氏です(インタビュー記事)。

この短いインタビュー記事では、投資銀行勤務から起業家に転じた李松氏のアントレプレナーシップにフォーカスが当てられていますが、途中からは彼の目から見たサービスの展望などが語られます。

「今後10年間ではモバイル領域における機会がさらに増えることでしょう。私は『ソーシャル』、『ローカル』、『モバイル』という3つのキーワードにフォーカスをしています」

「『チェックイン』は、標準的な機能になっていくと思います。そこでキーとなるのは、ロケーションをもとにしてソーシャルな交流を強めるような機能を開発することにあり、それは容易なことではありません。近くにいる人とソーシャルな関係を築く理由を与えられるかどうかが問題です」。李氏は、拡張現実がLBSに加えられていくことも確信している。

至極当然のことなのですがあらためてここで気づかされるのは、新規サービスを作るうえで起業家・開発者が念頭に入れているトピックは、各国間のインターネットの普及率の差などといったものとは独立しているという事実です。ある市場において、インターネットの普及がどのフェーズにあるかと、そこで提供されるサービスのテクノロジーがどのフェーズにあるかは、必ずしも一致しません。これは同時に、先進市場において成功をしているサービスをそのまま別の市場にローカライズすることの困難さをも示しているようにも思います。


[Summary]
Interview with the founder of Digu, a leading Chinese LBS, shows us that entrepreneurs and developers are taking notice of same kinds of topics, such as “mobile”, “local”, “social” and etc. , independently of developed countries or developing countries. There must be a gap between the internet penetration phase in certain market and the technological phase in that market.

Written by shungoarai

5月 8th, 2011 at 6:00 pm

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