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[BookReview] M. レビンソン『コンテナ物語 – 世界を変えたのは「箱」の発明だった』

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▼Week01-#02:M. レビンソン『コンテナ物語 – 世界を変えたのは「箱」の発明だった』(村井章子訳, 日経BP社)

感想:★★★★★
読了:2017/01/08

地元の駅では、普段使う在来線の電車と同じ線路の上を貨物列車が走っていて、幼い頃から石炭やコンテナを運ぶ列車をよく眺めていたので、「コンテナ」というものは親しみがあるというか、少なくともずっと昔からあるものだと思っていましたが、そうではなく、その歴史はまだ60年程度。本書は、その「コンテナ」の歴史とそれがもたらした影響を丁寧に描いた書物。

構成は、コンテナの発明に至るまでの海運業の前史と、マルコム・マクリーンという天才的起業家の起こした発明について記述した前半に続き、後半ではコンテナリゼーションがもたらしたロジスティクスの変化や、物流産業にとどまらないグローバル化への影響について詳述しています。

マルコム・マクリーンがすぐれて先見的だったのは、海運業とは船を運行する産業ではなく、貨物を運ぶ産業だと見抜いたことである。(中略)輸送コストの圧縮に必要なのは単に金属製の箱ではなく、貨物を扱う新しいシステムなのだということを、マクリーンは理解していた。港、船、クレーン、倉庫、トラック、鉄道、そして海運業そのもの――つまり、システムを構成するすべての要素が変わらなければならない。(レビンソン『コンテナ物語』p.80)

この「物語」という邦題がつけられた書物は、あるアントレプレナーが起こしたイノベーションの物語としても面白いながらも、以下の点で示唆に富み、アクチュアルな問題を考える上で参考になるように覚えました。

  • イノベーションがその先にどのような未来を生み出すかは、発明した当事者ですら正確に予測することは難しい。最後部の第13〜14章で扱われているように、コンテナリゼーションは単に海運業や輸送業界に効率化・低コスト化をもたらしただけでなく、メーカー・小売業がグローバル・サプライチェーンを構築することを用意した。本書中でも触れられるようにトヨタに代表される「ジャストインタイム方式」の実現の背景にロジスティクス要素が整ったことの影響は大きい。そして、この状況は現在の企業活動のグローバル化へとつながっている。
  • 上記のようにメーカー・小売業などの他産業(物流業にとっては顧客となる「荷主」)へと広範な影響がおよんでいくより前に、無論、イノベーションは業界内での勢力図というか、プレイヤーの役割・重要度に変化を与える。本書では、従来船主にとって荷揚げに不可欠だった港湾労働者(沖仲仕)への影響や、港湾整備への影響が詳述される。戦略の概説書などによく現れるような「5つの力(five forces)」を生々しく理解するうえで、一連の各章の記述は非常に参考になる。
  • 上での引用箇所にあるように、「コンテナリゼーション」とは、単なる金属の箱の発明ではなく、それをコアとした一連のシステムの発明であった。この観点からは、「コンテナの規格化」論争などを扱った各章の記述は、例えばガワー&クスマノのプラットフォーム論と対比して読むことも興味深かろう。
  • こと、労働組合と船会社との交渉についてまるまる割かれた第6章は、非常にアクチュアルに読み直すことができるかもしれない。つまり、昨今言われているAIによる人の作業・労働の代替(が起きる可能性)とは、コンテナリゼーションが港湾労働者から仕事を奪っていったことと類似的である。興味深いことは、必ずしも港湾労働者はすべての機械化に抗していたわけではないことである。
    • 機械化が導入され『現場ルール』が姿を消すと、1960年まで20年間ずっと横ばいだった労働生産性は大幅に上昇する。(中略)とはいえ組合の予期に反し、こうした大幅な効率改善に貢献したのは機械化ではなく『汗』だった。(中略)その結果、じつに珍妙な現象だが、労使の立場は逆転する。組合は重労働をすこしでも楽にしようと『早く機械化を進めろ』と経営側に注文をつけるようになったのだ」(同, pp.161-2)

以上のように、読むのに時間がかかる書物ながら、それ以上に考えるテーマやヒントを与えてくれる良書でした。忘れた頃にまた読みたい本です。


Written by shungoarai

1月 8th, 2017 at 7:00 pm

[BookReview] 永野健二『バブル – 日本迷走の原点』

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今年は計画的に読むべき本を読もうと、ひとまず3月末までの各週に読むべき本をリスト化してみました。そのリストに沿って、毎週2冊程度のペースでコンスタントにインプットしていきたいと考えています。


▼Week01-#01:永野健二『バブル – 日本迷走の原点』(2016.11, 新潮社)

感想:★★★☆☆
読了:2017/01/05

年末年始休みの後半に読み出したのは、バブル期の経済事象を日本経済新聞 証券部の記者として追っていた著者による80年代バブル経済を振り返った本から。話題作となった『住友銀行秘史』と前後して、約20年を経てこの時期に「バブル」をテーマとした書籍の出版が相次いだのは、長期化する現政権下での経済政策にバブルの萌芽が見られることへの警戒感によるものからでしょう。

住友銀行の元取締役によって書かれたイトマン事件の顛末に関する前掲書が当事者による定点記録であるのに対して、永野氏の『バブル』は元記者による書籍らしく、バブル期のさまざまな挿話をもとに構成された書物。

山一證券破綻、NTT上場、リクルート事件、イ・アイ・イや尾上縫、イトマン事件など、取り上げられるひとつひとつのエピソードはけっしてバラバラではなく、戦後から70年代まで日本経済を動かしていたシステムが変化しそこねたひとつのストーリーの諸相として提示されています。

すなわち「資金不足のもとでの金融の傾斜配分と、資源不足のもとでの産業の傾斜生産」(p.20)という前提で復興・経済成長を担った興銀を頂点とした金融機関が構造改革を先送った歴史として読むことができます。

…[引用者補:85年のプラザ合意以後]日本のリーダーたちは、円高にも耐えうる日本の経済構造の変革を選ばずに、日銀は低金利政策を、政府は為替介入を、そして民間の企業や銀行は、財テク収益の拡大の路を選んだ。そして、異常な株高政策が導入され、土地高も加速した。

その大きなツケを支払う過程が、「失われた20年」といわれる、バブル崩壊から現在まで続くデフレ状況である。アベノミクスというのは、80年代のバブルの時代の失政を償うための経済政策でもあるのだ。(永野『バブル』p.261)

いまだにまだ日本は「80年代バブル後」を生きているままであること、またその総括を十分にせず無自覚なまま次なるバブルへと足を踏み入れかけていることを考えさせられる一冊。


Written by shungoarai

1月 8th, 2017 at 5:00 pm

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[BookReview]峯村健司『十三億分の一の男 – 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争』

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東洋経済オンラインの「今週のHONZ」の記事で目にして気になったので、すぐ書店で買い求めて読了。取材で得た生々しい情報が読みやすい筆致で書かれていて、読み始めるとラストまで一気に読み進められました。

朝日新聞の特派員として北京で6年半を過ごした筆者は、

権力闘争こそが、中国共産党を永続させるための原動力なのではないか――。(略)
こうした見方をすると、習の評価も変わってくる。過去に例のない激しい闘争の末に誕生したからこそ、共産党にとっての最大の正統性を持ち、歴代の指導者よりも権力基盤をより早く強固なものにすることができたと言える。(pp.7-8)

という見方をしながら、「トラもハエもたたく」という習近平が進めている汚職摘発と、その裏側にある権力闘争の真実を描いています。

薄煕来や周永康の汚職事件の背後にあるより巨大な事件については、本書の第八章以降に譲るとして、私が本書を通じて興味深く思ったのは、習近平の (1) トップに上り詰めるまでと、(2) トップに上った後の権力基盤の確立過程です。

前者については、第七章で李克強とのトップ争いが詳述されています。1997年の第15回党大会で「中央委員候補」に当選した習近平(当時 福建省副書記)は、中央委員候補151名中151番目。後に一騎打ちをすることになる李克強(当時 共青団第1書記)は、すでにこの時点で中央委員に選出されていて、大きくリードしています。

「常にトップを走ってきた李克強がなぜ、一時は党幹部の中で最下位だった習近平に大逆転されたのだろうか」(p.230)という問いを立てる筆者は、以下のように考察しています。

圧倒的落差

  • 出世競争が厳しい中国共産党内においては、トップに近づけば近づくほど、反発や批判を受けやすくなる。仮に100人のライバルの中でトップになった瞬間、追い落とそうとする99人から攻撃の標的となるのだ。(p.230)
  • スロースタートでゴールまで最も遠かったダークホースは、最後の一騎打ちに向け、しっかりと脚をためていた。ピラミッドの頂点を目指すためのさまざまな下準備をしていた。(p.231)

性格の違い

  • 経済学の修士と法律学の博士を持ち、弁も立つ李だが、党内での人気が必ずしも高いわけではない。特に長老たちの評判が芳しくなく、党内選挙でも批判票を重ねる結果となった。前出の北京大の同窓生、王軍濤は「大学時代から論客だったが、相手を論破し過ぎて煙たがられることもあった」とも指摘する。(p.233)
  • 李との能力の差は明らかなように見える。だが、前出の閣僚級幹部経験者を親族に持つ党関係者の見方は、私とは異なる。「おまえの言うように李克強の方が個人として有能なのは確かだが、同じくらい頭脳明晰な党員は、我が党にはいくらでもいるんだ。最高指導者にとって最も重要なのは、そのたくさんの優秀な党員たちをまとめ上げていく『団結力』なんだ。(pp.233-4)

また、後者に関しても第九章ほか、至るところで触れられています。前任者であった胡錦濤は、その前任者であった江沢民に権力を握られ続けたことによってリーダーシップを発揮することができなかったのに対し、習近平はトップに上ると同時に手を打ちます。

「私は三つのステップで権力をつかもうと思っている。まず、江沢民の力を利用して胡錦濤を『完全引退』に追い込む。返す力で江の力をそぐ。そして、『紅二代』の仲間たちと新たな国造りをしていくのだ」

私は第18回共産党大会が終わった2012年末に、習近平が語ったというこの言葉をある中国政府幹部から聞いた。習がこの年の夏ごろ、親しくしている「紅二代」の党幹部に打ち明けた秘策なのだそうだ。(p.294)

本書に描き出された習近平の権力掌握過程の苛烈さを理解すると、先日の日経電子版の記事「誰も信じられない 国家主席を悩ます刺客の影」(2015年5月20日)の内容もよりリアルに感じられます。

ひな壇の中央に座る習。彼が会議中に飲むお茶用の蓋付き茶わんは、着席する直前に単独で運ばれてくる。(略)この日、女性スタッフの動きをじっと見つめる鋭い視線があった。2人の黒服の男性要員が左右から監視したのだ。女性スタッフの一挙手一投足も見逃さないというように。

こうした男性要員が、目立つ形で登場したのは今回が初めてだ。会議の途中、着席している「チャイナ・セブン」が飲む茶のわんに、後ろから湯を足す役割も、これまでの女性スタッフではなく、男性要員が担った。彼らには、お茶のサービスだけではない特別の任務があった。

「毒を盛られないように始終、監視する役割だ。万一、壇上に暴漢が現れても訓練された男性なら対処できる」

北京の事情通がささやく。男性要員は身分を隠しているが、習らに極めて近い信頼できる人物である。逆に見れば、お茶くみの女性といえども今の習には信用できない、ということになる。大量に捕まえた軍、公安・警察などの関係者が紛れ込んでいる可能性を排除できないのだ。

Written by shungoarai

5月 24th, 2015 at 7:32 pm

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[BookReview]中川右介『悪の出世学 – ヒトラー・スターリン・毛沢東』

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20世紀を代表する独裁者3人 ――ヒトラー・スターリン・毛沢東―― について、いかに競争・抗争を勝ち抜いて権力を奪取したのかという視点から描いた著作。現実離れした感のある内容をアクチュアルに切り取った作品だと思います。「はじめに」に書かれた以下の部分を読めば、それがアクチュアルな問題であることがわかります。

三人は叩き上げという共通点はあるが、組織内のスタートの位置はそれぞれである。毛沢東は創立メンバーのひとりだったが、失脚し左遷されたながらも、復権する。ヒトラーは創立メンバーではないが、まだ組織が小さい頃に加わり、出世していった。スターリンは巨大組織の末端から、出世していった。
彼らは二十世紀の著名な革命家・政治家であるが、三人とも、現代でいえばベンチャー企業の創業期からのメンバーだ。いまのベンチャー企業のほとんどはIT革命という技術革新を背景に生まれた。三人はいずれも皇帝の支配する国に生まれ、その帝政を倒して民主主義、さらには社会主義へ変革する政治革命の時代に生きた。その革命期に、少人数で始めた組織が巨大化していったのである。
したがって、本書は三人の権力者の出世物語でもあるが、二十世紀史の一断面であり三つのベンチャー企業の成長物語でもある。

本書では、

スターリンの基本戦略

  • 組織のために自分の手を汚す
  • 人の弱みを握り利用する
  • 情報を集める
  • 誰も信用しない

といった具合に、扱う3人の生涯(トップに上り詰めるまでの前半生)を概観しながら、様々な局面での振る舞いを「出世」という切り口で評しています。

ただ、これを単に「出世のためのアプローチ」としてのみ読むのはもったいない気がします。この3人は権力を得るために人を利用し、組織のプロセスを利用していくわけで、裏返せば、人の感情や、組織のプロセスが陥りやすい罠のチェックリストとしての読み方も可能でしょう。

プロセスを熟知し、それを逆手にとって権力を手中にするというテーマについては、より緻密な調査に基づいて書かれた『策謀家チェイニー 副大統領が創った「ブッシュのアメリカ」』も良書。こちらはジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領を務めたディック・チェイニーを扱った書籍ですが、刊行直後にチェイニー自身もしっかり読み込み、講演会で「同意しないくだりもいくつかあるが、著者は『ちゃんと調べている』と評価した」(訳者あとがき)という労作。

Written by shungoarai

6月 1st, 2014 at 8:26 pm

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[BookList]東大EMP 課題図書40冊

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ネットサーフィンをしていたら、蔦屋書店イオンモール幕張店で「東大EMP課題図書30選ブックフェア」なるイベントが先日まで開催されていたことを知りました(リンク:東京大学出版会)。「東京大学 エグゼクティブ・マネジメントプログラム(東大EMP)」は、組織のトップやその候補に対して教養教育を施すプログラムです。

30選がどういった書籍のラインナップになっているのか気になったのですが、Web上にそのソースがなかなか見当たらず、ようやく「週刊東洋経済」(2014年1/11号)の第2特集「1%の人になるための読書術」に収められていることを知りました。

ビジネスパーソンを対象としたプログラムではあるが、EMPはMBA(経営学修士)を取得するためのビジネススクールではない。学ぶのはサイエンスを中心とした、知と思考の最前線。「課題解決は特定領域の専門知識だけでもできる。だが、課題設定は多様な思考方法を知っていないとできない」(横山氏)。

「週刊東洋経済」2014年1/11号, pp. 82-83

プログラムの企画・推進責任者を務める横山禎徳氏がそう語るように、「課題設定能力の醸成」を目指す東大EMPの方針に沿ったその課題図書も多岐に渡っています。同誌には手始めの「課題図書10冊」と、「東大EMP課題図書リスト30選」とが紹介されていました。以下リスト。

課題図書10冊

書名著者・編者出版社・シリーズ
課題設定の思考力: 東京大学エグゼクティブ・マネジメント東大EMP, 横山禎徳 (編)東京大学出版会
税金 常識のウソ神野直彦 (著)文春新書
水危機 ほんとうの話沖大幹 (著)新潮選書
場所原論: 建築はいかにして場所と接続するか隈研吾 (著)市ヶ谷出版社
遺伝子医療革命: ゲノム科学がわたしたちを変えるフランシス・S・コリンズ (著) / 矢野真千子 (訳)NHK出版
社会を変える驚きの数学合原一幸 (編)ウェッジ選書
“測る”を究めろ!: 物理学実験攻略法 久我隆弘 (著)丸善出版
日本政治思想史: 十七〜十九世紀渡辺浩 (著)東京大学出版会
ユダヤ教の歴史: 宗教の世界史市川裕 (著)山川出版社
東インド会社とアジアの海羽田正 (著)講談社
出典: 「週刊東洋経済」2014年1/11号, p.83.

課題図書リスト30選

書名著者・編者出版社・シリーズ
サイエンス (10点)
〈科学の発想〉をたずねて: 自然哲学から現代科学まで橋本毅彦 (著)左右社 (放送大学叢書)
増補 iPS細胞: 世紀の発見が医療を変える八代嘉美 (著)平凡社新書
宇宙は何でできているのか村山斉 (著)幻冬舎新書
人類の住む宇宙 (シリーズ「現代の天文学」第1巻)岡村定矩ほか (編)日本評論社
見えないものをみる: ナノワールドと量子力学長谷川修司 (著)東京大学出版会 (UT Physics)
21世紀の物質科学: 最先端がわかる東京大学物性研究所 (編)培風館
流れのふしぎ: 遊んでわかる流体力学のABC石綿良三, 根本光正 (著)講談社ブルーバックス
正しく理解する気候の科学: 論争の原点にたち帰る中島映至, 田近英一 (著)技術評論社 (知りたい! サイエンス)
光触媒のしくみ (入門ビジュアルサイエンス)藤嶋昭, 橋本和仁, 渡部俊也 (著)日本実業出版社
植物医科学 <上>難波成任 (監修)養腎堂
経済・産業 (6点)
日本経済 見えざる構造変換西村清彦 (著)日本経済新聞出版社
いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ: 有効需要とイノベーションの経済学吉川洋 (著)ダイヤモンド社
金融論: 市場と経済政策の有効性福田慎一 (著)有斐閣
国際標準化と事業戦略: 日本型イノベーションとしての標準化ビジネスモデル小川紘一 (著)白桃書房 (HAKUTO Management)
太平洋のレアアース泥が日本を救う加藤泰浩 (著)PHP新書
海の大国ニッポン東京大学海洋アライアンス (編)小学館
政治・思想・哲学 (5点)
自由と公共性: 介入的自由主義とその思想的起点小野塚知二 (著)日本経済評論社
朝鮮開化思想とナショナリズム: 近代朝鮮の形成月脚達彦 (著)東京大学出版会
悪の哲学: 中国哲学の想像力中島隆博 (著)筑摩選書
日本的霊性鈴木大拙 (著)岩波文庫
聖書の言語を超えて: ソクラテス・イエス・グノーシス宮本久雄, 大貫隆, 山本巍 (著)東京大学出版会
言語・社会 (9点)
脳の言語地図酒井邦嘉 (著)明治書院
言語の脳科学: 脳はどのようにことばを生みだすか酒井邦嘉 (著)中公新書
自分と未来のつくり方: 情報産業社会を生きる石田英敬 (著)岩波ジュニア新書
日本「再創造」: 「プラチナ社会」実現に向けて小宮山宏 (著)東洋経済新報社
「課題先進国」日本: キャッチアップからフロントランナーへ小宮山宏 (著)中央公論新社
東大がつくった高齢社会の教科書東京大学高齢社会総合研究機構 (編)ベネッセコーポレーション
バリアフリー・コンフリクト: 争われる身体と共生のゆくえ中邑賢龍, 福島智 (編)東京大学出版会
循環思考横山禎徳 (著)東洋経済新報社
大学とは何か吉見俊哉 (著)岩波新書
出典: 「週刊東洋経済」2014年1/11号, p.85.


[Summary]
The Todai EMP (The University of Tokyo Executive Management Program) is a professional course launched in 2009 which aims “to provide future organizational leaders, particularly outstanding individuals in their forties with the potential to become top managers, a Ba [=場, or “field for learning”] to shape high-level management capabilities in every aspect of their personalities”(Link).
Here shows the list of the recommended books to the program participants, which partly appears in a weekly magazine “Toyo Keizai” in its Jan. 11 issue this year.

Written by shungoarai

5月 18th, 2014 at 6:25 pm

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[雑記]帰国しました(メモ2:香港のスタートアップ事情)

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はじめて使った「Airbnb」をレビューした前回のエントリーに引き続き、旅行中に見聞きしたことをざっとまとめます。

2. 香港のスタートアップ事情

当初の予定にはなかったのですが、せっかく香港・シンガポールに来ているからということでいくつかテック系スタートアップのファウンダーにコンタクトをしました。あいにくシンガポールでは滞在日数が短かったこともあって会うことはできなかったものの、また機会を改めて会おうということでファーストコンタクト。香港では滞在最終日に、いま私自身が私的に手伝っているプロジェクトに近いドメインでiPhoneアプリを出しているスタートアップ起業家と有意義なランチミーティングを持つことができました。

その後、彼の紹介で彼も関わっているという湾仔地区のco-working place「BootHK」にも足を運びました。これまで香港ではスタートアップ向けのシェアオフィスのようなところがなかったらしく、MTR湾仔站(駅)からほど近い雑居ビルの13Fを使ったこの場所が香港初のco-working placeだということです(現在は上環地区に2箇所目をオープンしたとのこと)。

at BootHK, a co-working place in Wan Chai, Hong Kong Island

単に空間や設備を共有しあっているだけでなく、時折自分の進めているプロジェクトについて周りの人からも意見をもらっているうちにディスカッションになるような、とてもよさそうな環境でした。いろいろと話を聞いたことや、そこで見せてもらったプロジェクトなどからの感想は、

  • 香港でもテック周りのスタートアップ起業家は増えているが、投資家がまだあまりこの領域に目を付けていないので、ファイナンス面での環境はシンガポールのように整備されている状態ではないのが実情。(だから「これからなんだ」とポジティブなところが印象的でした)
  • どこでも考えているようなサービスってみんな一緒なんだなという感じ。住んでいる場所も言葉も違うとはいえ、「ソーシャル」のような人間的な概念は普遍的だから、それを核として作られていくサービスっていうのはどこでも同じようなことが考えられている。

という感じです。

 

他にも書きたいことはいろいろとあるのですが割愛します。ただ、これまで言語的・文化的な特殊性によって守られているマーケットとされていた日本にいることで、明らかに見えにくくなってしまっている事態が日本の外では進行しているということを、普段出張で行くことのあったこれもまた特殊なマーケットである中国本土以外の国を久々に旅行してみて思いました。

 

主に予定を入れていない週末などのオフの時間に撮った写真を Flickr にもアップロードしました。やはり写真を撮るのは好きです。

"Market" at Buffalo Rd., Little India, Singapore

"Market" at Buffalo Rd., Little India, Singapore

Written by shungoarai

7月 19th, 2011 at 9:30 pm

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[雑記]帰国しました(メモ1:Airbnbを使ってみた)

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6月末から2週間ほどの日程で香港・シンガポールを訪れていたのでブログの更新が滞っていました。今回の滞在はいくつかの目的を持っていたのですが、事前に多くのアポイントをとっていたこと、また、渡航後にもアポイントを増やしたことなどで多くの方と会うことができたこともあり、有意義なものとなりました。2〜3度に分けてメモを書いておきます。

1. 「Airbnb」を使ってみた

『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』でも取り上げられたWebサービス「Airbnb」は、以前から気になっていたのですが周囲に使ったことのある人もいないので、今回の旅行ではじめて使ってみました。「Airbnb」は、簡単に言ってしまうと、CtoCで部屋の貸し借りをするプラットフォームです。開始当初は投資家から白眼視されていたようですが、設立から3年弱の現在でユーザーの累計宿泊数160万泊、会社の評価額10億米ドルに達している成功したスタートアップ企業です(参考:TechCrunch JAPAN)。

今回の旅行のうち、香港での前半日程7泊と、シンガポールでの4泊の宿泊先をAirbnbで選びました。選び方はExpediaのホテル検索などとほぼ変わりません。Airbnbのトップで「滞在先」と「日程」を選んで検索します。

「滞在先」と「日程」をトップページで入力

検索結果画面には、その日程で利用可能な当地の物件が表示されます。

検索結果ページ

検索結果の表示は “Recommended”(評価のよさ)、”Distance”(目的地との距離)、”Price: low to high”(価格:昇順)、”Price: high to low”(価格:降順)、”Newest”(登録して間もない物件)でソートすることができ、表示されている物件の中から選んでいきます。

部屋の個人間での貸借なので、もちろん貸し手にも借り手にも不安はあるかと思うのですが、それを軽減するのはユーザーがいずれも比較的長めに書いているReviewや、Airbnb内でのFriendのコメントです。Reviewは、滞在期間が終了した後に、貸し手が借り手を、また借り手が貸し手と部屋について書く感想で、これらの情報と部屋のスペックを見比べながら候補を絞り込んでいきます。

そのなかで、私は香港・シンガポールともにそれぞれ2つの部屋の貸し手にコンタクトを取りました。すぐに “Book it!”(予約する)のボタンを押すこともできますが(これを押すと、今度は貸し手側が借り手をacceptableかどうかを判断して、受け入れるかどうかを決めるようです)、”Contact me” というボタンもあり、貸し手とメッセージをやりとりすることができます。このメッセージ機能については、貸し手の “Response Rate” も公開されているので、これも貸し手を評価する目安ともなります。私は、予約していたフライトの香港着時間が少し遅い時間だったので、遅い到着になっても大丈夫かどうかといった質問を、簡単な自己紹介と今回の旅行の目的などを添えて送信しました。

やりとりの結果、「レスポンスが早く、誠実だった」という理由で香港とシンガポールの滞在先を決定しました。取引が成立するまでは、貸し手の氏名も部分的にしか表示されていないのですが、成立後になってフルの氏名や、正確な住所、連絡先などが渡されます。そこで、さらにメッセージなどのやりとりをして、部屋へのアクセス方法などを教えてもらいます。

さて、当日実際に着くと、部屋の鍵を渡されます。余っているベッドルームを貸すケースなどが多いようですが、その部屋に間借りして住むようなものなので、玄関などの鍵が預けられます。また、家の中をざっと案内してもらいます。各物件の “Amenities” に設備概要は載っていますが、この時にキッチンはどこで、バスルームはどこで、Wi-fiのネットワーク名とパスコードはこれで、などの説明を受けます。香港での滞在先では、そうしたFAQがすでにファイリングされていました。

戸締り厳重な香港の家。3本の鍵を渡されました。

FAQや名所へのアクセス方法をまとめたファイルがありました。

CtoCで部屋を貸借をするというサービスですが、いわゆるホームステイと違うのは、あくまで「Airbnb」が提供をしているのは部屋であって、貸し手による歓待などは特にないということです。彼らの余っている部屋を一定期間間借りして、キッチンやリビングルームを共用するけれど、別にホストファミリーとして何か一緒にアクティビティをするというわけではありません。ただ、私は一回、週末に貸し主が友人を招いて開いていたホームパーティに「Shungoもジョインしなよ」と言われて参加しました。

はじめてのAirbnb体験でしたが、非常におもしろいサービスだと思いました。

  • 当地の人がどういう家に暮らしているかわかる。
  • リビングルームなどの共用スペースも使えるので、そこで貸し手などとコミュニケーションができる。

などの点が、主なポイントです。特に、当地に知り合いがいないうえ、ホテルに滞在するとなると現地の人と話す機会などかなり減りますが、現地に住む人の家に滞在するわけなので、コミュニケーションをとる機会はいろいろとあります。

一方、

  • ホテルに比べると価格はリーズナブルなところが多いが、しかし破格の値段で提供されているわけではない。

という理由から、価格面のメリットだけで選ぶのはあまりおすすめしません。あくまで、現地の人の家に気楽に滞在するというのがこのサービスのよいところなので、英語もしくは現地の言語でのある程度のコミュニケーションスキルがない場合は、十分に楽しめないかもしれません。

その他、雑多な気づきで言うと、

  • ユーザーがFacebookのアカウントとひもづいていたりするので(常にそうであるわけではないけれど)、安心感がある。
  • 海外の生活、といっても特にexpatな生活は垣間見られるかも。
  • 宿泊した2つの物件と、いろいろな物件のレビューを見る限り、貸し手は夫婦とかカップルで生活している人が多いようです。これももしかしたら安心材料なのかもしれません。
  • 海外で流行っているとは言うけれど、意外とまだデジタルな領域で仕事をしている人たちがユーザーには多いような印象。(香港での貸し手はほぼ同業な方でした)
  • 香港の貸し主から聞いたのですが、既に中国では「Wimdu」というコピーサイトがあるとのこと。そっくりです。

と言ったところです。

次回のエントリーで、その他の気づいたことなどをまとめます。

Written by shungoarai

7月 16th, 2011 at 6:30 pm

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あなたのソーシャルグラフとわたしのソーシャルグラフはぴったりと重ならないということ(当然だけど)

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Facebook Status (June 12th, 2011)

最近、しばしばソーシャルメディア上での振る舞いに関するマナーについて考えるようになりました。Facebookのようなオープンなソーシャルネットワーキングサービスが次第に浸透してきて、こういうサービスに慣れていない人もこれからどんどん使うようになるフェーズに来ていると思うので、マナーのようなものが整備されるべきではないかと考えるからです。

そこで、そうしたマナーを考えるにあたって念頭に置かなくてはならないことは、私たちのバックグラウンドにあるソーシャルグラフはそれぞれ異なっているのだという当然の事実です。個人の一次的なソーシャルグラフは、構成される人々も異なるし、たとえ同じ人物がそこにあらわれようと捉えられ方はそれぞれ異なるのだということを、しっかり考えなくてはなりません。

冒頭のFacebook上への投稿も、そうしたことを考えていた際のものです。Facebookに写真を投稿したりなどする際にそこに登場する人物をFacebookアカウントと紐付けること(タグ付け)が多くなってきていますが、私にはどうもそれはものすごく一方的というか乱暴なコミュニケーションの方法のように感じます。

予定というものは、多かれ少なかれ何か別のこととのプライオリティの調整によって組まれるものであり、なおかつ円滑な人間関係を保つためには、他者(知人・友人たち)が関わる予定のプライオリティはどれもトップに位置づけられているように見えることが望ましい。そうは言っても「優先順位付け」を行うという場合、すべてを等しく最上位に置くことはできないわけですから、大事なのは自分にとってのプライオリティを他者からは見えなくすることでしょう。

しかし、(Facebookの不意なタグ付きの投稿に代表されるような)オフラインのことがらがソーシャルメディア上で共有されるとき、見せるべきでなかったプライオリティが不意に可視化されてしまう場合があります。

何かのプライオリティを上げて選ぶということは、相対的に、別の何かのプライオリティを下げて選ばないということです。そういう場合、「何を選んだのか」が知られることで不利益を被るケースもあるわけで、当事者としては細心の注意を払わなくてはなりません。しかし、自分がいかに細心の注意を払おうと、別の誰かの投稿がそれを台無しにする可能性があります。ここで意識しなくてはならないのは、投稿した人自身は、その投稿が自分には不利益をもたらさないと知っているということです。ただ、他の人々にとっても同様かどうかまでは十分考えられていないことでしょう。

ソーシャルメディアで投稿を行う場合、その投稿が自分に不利益をもたらさないのと同様に、他の関係者にも不利益をもたらさないかどうかを確認した上で投稿するということが根本的なマナーではないかと思います。それは自分自身のソーシャルグラフを尊重するのと同様に、知人・友人のソーシャルグラフをも尊重するということです。

そして、それはユーザーサイドの意識のみによって実現されるのではでなく、サービスサイドでも仕様的に解決すべきことだと考えます。


[Summary]
Open social networking services as Facebook, not closed as mixi, are gradually expanding here in Japanese market. Now that manners on social networking services should be maintained, because many without enough experience to use such services are now starting to use.
I think the most important and fundamental manner is considering whether posts which users are about to publish will bring any disadvantage to others, not only to posting users themselves. This is the way to respect others’ social graphs as well as our own. And this should be fulfilled not only by users’ consciousness but also by the functional support of service side.

Written by shungoarai

6月 27th, 2011 at 10:30 pm

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[Data]中国における位置情報サービスの成長

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しばらく忙しかったためにブログ更新が止まってしまっていました。

先日の投稿記事では、中国で最大規模のロケーションベースサービス(LBS)である嘀咕(Digu)を創業した李松氏のインタビュー記事を引用しましたが、中国におけるCheck-in型LBSの市場規模予測が調査会社のiResearch(艾瑞咨詢)から今年の3月に出されています(簡易版ダウンロードページ)。

それによると、今後の拡大が以下のように予測されています。

中国におけるLBSユーザー数推移予測

中国におけるCheck-in型LBSユーザー数推移予測(iResearch)

一方、Analysis(易観国際)からも最近、今年第1四半期における中国のCheck-in型LBSユーザー数とその市場シェアに関するリサーチが公表されています。それによれば、中国における累積アカウント数(重複を省いたユーザー数ではない)は655万に達しており、その4分の1程度を嘀咕が占めているという結果です。

Analysis International: Check-in LBS share in China

中国におけるCheck-in型LBSのアカウント数シェア(Analysis International)

嘀咕の他、街旁(Jiepang)切客(Qieke)を合わせた上位3プレイヤーでほぼ市場の半分を占めているような状況です。上にも書いたとおり、これは累積のアカウント数におけるシェアであり、ユーザーの重複を省いたものではないことに注意をしなくてはなりませんが、ユーザーが複数サービスを使い分けている可能性があるので、あるいは「累積アカウント数におけるシェア」という指標はフェアなものなのかもしれません。Foursquare や Gowalla などを使い分けるのは非常にめんどくさいことですが、中国のLBSは、日本で使われているものよりもはるかにクーポン提供などが多いように見えますので(私自身は上海にいる友人から最初に勧められた街旁をメインで使っていますが、さまざまなブランドがバッジやクーポンを提供しています)、自分の行きたいお店と、そこのクーポンがどのサービスで提供されているかをあわせて考慮した上で、場合に応じて使い分けられている可能性も考えられます(ただし、これはいまのところ想像の域を出ません)。

開発途上国向けの廉価版 iPhone の開発が進められていること(参考:WSJ 日本版記事)や、これらのサービスがスマートフォン端末へのプリインストールを進めていること(例えば、街旁は中国ではHTCとSony Ericsson製端末にプリインストールされています。参考:街旁 Webサイト)も考えると、中国でのCheck-in型サービス市場はスマートフォンの普及とともに成長をしていくことが見込まれます。

ちなみに、街旁のCEO David Liu氏のインタビュー記事が先週の Penn Olson に掲載されていたので興味のある方はご一読ください。


[Summary]
According to sources from iResearch and Analysis, both of which are market researcher in internet industry in China market, check-in style LBS (location-based service) is growing fast and almost half of the current market share is had by top 3 services (based on the number of account) are Digu (25.5%), Jiepang (11.8%) and Qieke (9.8%). LBS growth synchronizes with the penetration of smartphone with GPS function everywhere in the world, of course in China. We should notice that Apple is now preparing cheaper iPhone devices for developing countries and some LBS has already tied up with smartphone makers in order to pre-install their services onto the devices.

Written by shungoarai

6月 26th, 2011 at 6:30 pm

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3つの「中国版LinkedIn」 – 優士網(Ushi)、経緯(Jingwei)、恒知網(Hengzhi)

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Bloomberg の記事によると、LinkedIn の国際事業担当副社長 Arvind Rajan 氏は、先日北京で行われたテクノロジー関連のカンファレンスで、「魅力的な中国市場への進出は慎重に行いたい。果敢に飛び込むが成功できない、というようなことは避けたい」と話しています。一方で、この中国市場には、LinkedIn の全世界での現ユーザー数に匹敵する約1億人の潜在ターゲットがいるということも Rajan 氏は語っています。LinkedIn は、Facebook や Twitter など他のサービスと比べると珍しく、中国で禁止されていないサービスですが、いまのところ慎重な姿勢をとろうという判断のようです。

そうしたなか、中国では同様のローカルなサービスが続々と出ています。そこで、Technode の記事をもとに見てみると、これまでに聯絡家(Linklist)、天際網(Tianji)、Xing などいくつものサービスが立ち上がったり海外から参入しては、収縮・撤退しているようです。そうした状況は、中国の文化的背景にもよるようです。

LinkedIn のコピーや Xing といったサービスが中国で流行らない理由は簡単だ。人人網(RenRen)や開心網(Kaixin001)が比較的たやすく成長しているのは、中国人は、写真のアップロードや、リンクの共有、友人にちょっかいを出したりソーシャルゲームで遊ぶのが好きだからだが、ことビジネスとなると中国人は慎重になり、伝統的な方法を好むのだ。それは、個人的な面会や会食といったもので、もちろん酒席も含まれる。話し合いをするならサービス内のメッセージのやりとりを使うよりも、いまだ電話の方が好まれる。オンラインでビジネス上の「関係(Guanxi)」をうまく維持する方法はいまのところほとんどない。

現時点では、以下の3つのサービスが「中国版LinkedIn」としてまずまずうまくやっているようです。

  1. 優士網(优士网, Ushi)
    2010年2月にベータ版ローンチ、同年10月に正式ローンチ。20万ユーザーには、12,000名のCEOと5,000名のCTOを含む。 (優士網については こちらの記事 で詳しく解説されています)
  2. 経緯(经纬, Jingwei)
    今年3月にベータ版ローンチ。中国のSNS最大手「人人網」が運営。 Q&Aを充実させることで、LinkedIn + Quoraのようなサービスを目指している。
  3. 恒知網(恒知网, Hengzhi)
    2010年2月にローンチ。現在はまだ招待制であるものの、すでに60万ユーザーを持つ。大半のユーザーが28~40歳で、5年以上の勤務歴を持ち、60%以上のユーザーがVP以上のタイトルを持っている。

先行サービスの収縮・撤退などを見たうえでこれらのサービスは、急拡大によるユーザーの質的低下などを防ぎながら、ひとまずは慎重に進めているように見えます。優士網の共同創業者 Dominic Penaloza 氏は以下のように語っています。

天際網の失敗は急速なユーザー拡大によるものだ。優士網ではユーザーをグレード分けしたうえで、そのグレードによってできることに制限を設けている。例えば、アカウントを新規開設したばかりのユーザーは、1日あたり100以上のコンタクト申請をすることができなかったり、コンタクト申請が拒まれれがちなユーザーについてはコンタクト申請を送ること自体が難しくなる、といったことだ。

しかし、Penaloza 氏自身「LinkedIn もそうやっているようにね」と言い添えているように、各サービスとも中国の文化的背景に適合させた機能を付けているといった感じではありません。潜在ターゲット数1億の大きなパイを少しずつ切り取っていくゲームはまだ始まったばかりのようです。

†参照記事:Technode #1, #2, #3, #4, #5


[Summary]
LinkedIn, the most famous and successful professional network in the world, is now seeking for Chinese market which has 100M potential targets, but it will be cautious to go into the Chinese market where many foreign web services such as Google, Twitter and Facebook has been banned. On the other hand, there have already been a several domestic professional networking services in China market, and successful 3 services out of them at present seems to be Ushi, Jingwei and Hengzhi. The competition among these services seems to have just started recently.

Written by shungoarai

6月 11th, 2011 at 8:00 am