あらためて「自動車は『もの』であり、自動車が走行することが、自動車の『サービス』である」(同書, p.26)と書かれるとき、「サービス」という捉え方をすることでさまざまなビジネスの見方が変わるように感じた。たとえば、UBERやLyftのビジネスは一般には「シェアリングエコノミー」「ライドシェア」という言葉で言い表されているけれど、これは資源の調達面に目を向けた場合の視点によるもので、別の側面から見ると「Riding (Mobility) as a Service」とも呼ぶことができると思い当たった。
どのような価値(あるいは本書の枠組みでいうところの「サービス・コンセプト」)を顧客に届けるか、を考えていくことが当然ながら重要だ。私自身関わりのあるSaaS(Software as a Service)の領域でもこれは同様で、”as a Service” の部分はややもすると「パッケージソフトウェアという形ではない(クラウドで提供している)」という提供形式の部分にとらわれてしまいがちで、サービスの品質向上=提供するソフトウェア部分の品質向上という発想に陥ってしまうことも多いが、実際には、ソフトウェア云々を措いて「○○○ as a Service」を顧客への提供価値ベースで考える発想が必要なのかもしれない。
第4週目の課題図書は、先週に引き続きハーバード・ビジネス・スクールのチェスブロウ教授の著書『OPEN INNOVATION(原題 “OPEN INNOVATION: The New Imperative for Creating and Profiting from Technology”)』。クリステンセン教授の『イノベーションのジレンマ』と並んで「新たな古典」としての地位・定評のある書物で、またとても平易に書かれた入門的な書でもあります。
Xerox社の社内研究所「PARC(Palo Alto Research Center)」は、今日のPCやコミュニケーションを支える技術開発に大きく貢献し、またAdobeなど、スピンアウトして成功したベンチャー企業も輩出したが、Xerox社への利益には寄与しなかった。問題の所在を「イノベーションのマネジメント」に見る。
第3週目の課題図書は、ハーバード・ビジネス・スクールのクリステンセン教授の名著『イノベーションのジレンマ(原題 “The Innovator’s Dilemma – When new technologies cause great firms to fail”)』。書名は広く知られているものの、きちんと読まれたことのない本の代表格であるようにも思います。邦訳書 巻末の「解説」にも書かれているように、本書はクリステンセン教授の先行するさまざまな論考をもとにまとめあげられており、それらの一部はビジネススクールでの教科書として定評のある『技術とイノベーションの戦略的マネジメント(原題 “Strategic Management of Technology and Innovation”)』(邦訳書)にも収められています。
第2週目の2冊目は、未来学者レイ・カーツワイルの『シンギュラリティは近い』。2005年に出版された “The singularity is near”(邦訳『ポスト・ヒューマン誕生』, 2006年)のエッセンス版。一冊を通して扱う技術的特異点(シンギュラリティ)とは、「われわれの生物としての思考と存在が、みずからの作りだしたテクノロジーと融合する臨界点であり、その世界は、依然として人間的ではあっても生物としての基盤を超越している」(『シンギュラリティは近い』p.15)と説明されています。コンピュータの計算能力の飛躍的な向上がさらなる技術革新の速度を速めていき、脳と機械が接続されたり、ナノボットテクノロジーによって人間の身体・脳の能力が強化(enhanced)された結果としてシンギュラリティ=「人間の能力が根底から覆り変容するとき」(同, p.107)へ2045年頃に到達すると予測している本です。
英オックスフォード大 マイケル A. オズボーン准教授の2013年の論文「雇用の未来 – コンピューター化によって仕事は失われるのか」(The future of employment: How susceptible are jobs to computerization?, PDF)を発端にして、各種メディアで「あと10年でなくなる仕事」が話題になった結果、さまざまな専門職において「単純作業はAIに任せて、より付加価値の高い業務(コンサルティングなど)にリソースを割いて生産性を高めよう」式の議論がなされているが、これは技術の進展のスピードを甘く見積もっているように思う(上記1で挙げた「直線」的な変化として捉える認識に寄りすぎている)。おそらくは、その付加価値が高く、クリエイティブな業務もAIに代替されていこうというなかで、いかにAIをうまく業務に取り込んでいき、サバイブしていくかを考えていく必要がある。
本書の趣旨は、いかに「イノベーション」という営みをサイエンスし、きちんとマネジメントできる(つまり企業活動へと適応させる)かということ。原題は “Innovation and Entrepreneurship” となっていますが、「アントレプレナーシップ」とはいうものの、けっして起業家・創業者に絞ったようなテーマを扱っているわけではなく(特に第2部で扱っているように)ベンチャー企業のみならず、民間の既存企業やあるいは公的機関すらもその扱う対象として含め、いかに新たな事業を仕立てるかを体系的に考察しています。